依頼者杉野様(仮名)には家族思いの娘(対象者)がいらっしゃいます。最近はあまり実家に来なくなったそうで、毎年、誕生日や家族の集まりには実家に帰ってくるのに、今年は忙しいからと一緒にショッピングも映画も一度も行っていなかったそうです。
何か気になって、一人暮らしの娘のマンションに立ち寄ったところ、先月に転居されているとの情報が。携帯電話にかけると現在は使われていないガイダンスが流れ、住民票を確認すると実家に置いたままで動かしてはいません。なんと勤務先まで退職したようなのです。娘に何かが起こっていると心配されたご夫妻が、娘の引っ越し先を知りたいと相談に来られました。

調査を契約してからすぐに娘さんから、母の携帯に非通知で、「心配しないで、どうかしばらくそっとしてほしい」と連絡が入りました。両親としては、無論そっと出来る状況でありません。

調査で判明した住所には男性と住んでいました。小さなワンルームなので2LDKのマンションに住んでいた娘さんの荷物は入りきらず、レンタル倉庫にも置かれていることも判明しました。なぜ連絡して来なかったのか?
男性を親にすぐに紹介出来ない方だったからだそうです。事情のある男性で、全てを捨てて彼のところへ突然行ったのでした。30代、仕事も、整った家具のあるマンションも捨てる覚悟で彼と一緒に居たかったと。しばらくは彼と同棲して落ち着いたら連絡するつもりだったようです。

依頼者ちえり様(仮名)の父親は借金や暴力が絶えませんでした。なにかのきっかけで母親(対象者)は家を出て、ちえり様は児童相談所に預けられていましたが、父の再婚で一緒に暮らすようになりました。
ちえり様は10代で妊娠、結婚しました。夫はまじめで優しい人です。
10代の頃は非行の道に走り、あれほど母を恨んでいたというちえり様。お子さんが出来てから、無性に母に会いたいと思う気持ちが日に日に強まったそうです。

母親の所在は困難を極めましたが、その後の人生は想像していた以上に苦労している人生を送っていたことがわかりました。
現在も独身で、小さな市営住宅に住み、今も身を粉にして働いていました。

相談の結果、ちえり様は先ず母親に手紙を書き、場所と日時を指定して、ご自身の思いと、「もし会いたくなければ来なくてもいいです。」という手紙を送り、その日を待つことにしました。
約束の日時に母はやってきました。ちえり様の母親は、来るべきではないと恥じて、ギリギリまで悩んでいたそうです。ただ、孫が生まれた写真を同封していたので、どれだけ罵られても会うことを決意したようです。母は何度も子供に会いに学校へ行ったり、自宅に電話をしたこともあったそうです。親権を取る前に離婚がすすめられ、無情にも全てが裏目に出てしまい、ずっと後悔ばかりの人生だったと母親は号泣されていました。それから1年が過ぎ、ちえり様には2人めの子供が生まれました。今では母親は近くに引越し、パートで働く時は子育てを手伝ってくださっているそうです。

依頼者の正頭様(仮名)と彼女(対象者)とは学生時代からの同級生で、長い交際期間を経て結婚への準備をしていたところ、正頭様の勤める会社が倒産。
更に、両親の離婚や自分自身が病気になってしまったことで気持ちがそれてしまい、結婚をしばらく延期にする方向になってしまったのです。どちらが悪い訳ではなく、ただ気持ちのズレは本当に少しづつ心を離していきます。
誰と恋愛をしてもずっと彼女のことが忘れられない。
ならばどうして尽きつめて話をしなかったのですか?と聞かれても答えられません。失って初めてわかる彼女への思いが、年齢を重ねてあふれてきます。

彼女は地方に住み、依頼者の思う姿で元気に生活していることがわかりました。
あとで、告白されたのですがその後、依頼者は再度の病で入院をする予定だったようです。
報告中もとても穏やかな表情をされて、報告書は処分してくださいと翌日返送されてきました。
これからは何事も後悔しない生き方をしますとだけ書かれていました。