別居話
2021年12月09日 カテゴリー:調査記
いつからだろう。夫が帰ってこなくなったのは。
いつからだろう。夫が家でごはんを食べなくなったのは。
いつからだろう。妻の帰りが遅くなったのは。
その違和感が少しずつ小さなほころびとなって徐々に広がっていていく。それはいつのまにか大きな穴になっていても日常の生活に追われ、その穴をみてもなぜこうなってしまったのか思いだせないのである。
好きな人がいる。
新しい人生を踏み出したい。
なので離婚してほしい。
不倫については何故か自ら告白する夫や妻もいて、突然の告白に受け入れるのに時間がかかり、ならば深く話を聞こうとすると、時がたつにつれ、その告白は気の迷いであり、或いはこれ以上はもう語りたくないと、自由を謳歌するようにもなり別居の話も進み、混乱するのである。
たかだか浮気ぐらいでと経験のない人は軽んじるだろうが、心が離れ、疎ましく思われ、心ここにあらずの暮らしは生活の歯車の全てが狂いだしていく。
かれこれ25年近く、調査業の世界にいると様々な人間模様、表の顔、裏の顔。感情の複雑さに翻弄されるが、それはある日突然、どんな人にもやってくるかもしれないもので、事実、自分自身、永遠に妻でいると思っていたが25年前に離婚し、今がある。
調査はネガティブに捉えてしまいがちだが、必要な人には想像ではない真実を確認して、さらに自分を見つめなおす時間をくれるものだと思っている。
その後の依頼人の姿は想像を超えた人生を始めた人も多く、自分自身がそうであったように人生の正念場を超えられたこそ、混乱し迷走する依頼人に寄り添えるのだと思いたい。