天神橋筋商店街20
2020年4月08日 カテゴリー:雑記
最近の楽しみは駅までの道のりの桜並木を歩くことである。
前日まで五分咲きぐらいだったと思うのに、朝になると驚くほどの満開の桜に圧倒される。
並木通りは去年の台風で多くの桜の木を失ってしまったが、満開になればそれを補うほどの見事なまでの桜が咲き誇っている。
桜はきっと日本人にはなくてはならない花の一つではないかと思う。出会いと別れの象徴で、人生の終盤には果たしてこの桜も来年は見られるのだろうかと心を奮い立たせるものでもあって、その満開の桜を誰と眺めるかで思い出の深さも違ってくる。
事務所に向かうとき「天神橋筋六丁目駅」で下車するようにしている。
いつもにぎわっている天神橋筋商店街は2駅分を歩くことなどは苦にもならず、リアルな生活と密接に関わっている商店街はみているだけで楽しくなる。
そんな朝の風景がいつもと違ってきたように思うのは私だけではないだろう。
飲食店のお店の人が玄関からドアノブから丁寧に消毒をしている姿を見るようになり、よからぬムードが漂い始め、しばし休業の張り紙が増えていく。
知り合いも多い店主から伝え聞くに、この騒動がマスコミが報じている以上にあらゆる業界に不安を与えていることを感じ取るのである。
思い出すのはやはり、東北の震災時に親友のいる仙台へ向かった時である。テレビでは被害の大きさから自粛ムードが高まっているというニュースだった。
震災1ヶ月後だったが、仙台市内では行列が出来るほど飲食店に客が並んでおり、皆、笑顔で牛タンを食べていて、商店街のお店では老若男女が様々なお店で買い物をしていて、あちこちで再会を祝すべく涙を流し肩を抱き合っている人たちが多くいたことに。
私はネガティブなニュースとは違う、今を何とか普通に生きる人々の姿を見て、心が揺さぶられ、街にあふれる人たちの姿を写真にとっておきたい衝動にかられるほどだった。
きっとどんなことがあろうとも人間の欲求はけして内なるものではなく、許されるときが来れば外に向かっていて、誰かと親交をあたためたくなり、美味しいものを食べ、身を整えたい気持ちにもなっていくのだろうと。
夜、桜並木を歩くときも圧巻である。
桜吹雪となって妖しくも舞い、暗闇に聳え立つ。仙台の町はずれに隠れた名所の桜を見せたいと友人と見た桜も大木のしだれ桜だった。
この春を何とか乗り越えて、本当の春が来ることを願っている。