リザ・アラート
2018年11月28日 カテゴリー:雑記
リザ・アラートとは行方不明専門のボランティアで構成された非営利組織の名前である。
ロシアでは30分に1人が行方不明になり、警察へは年間20万件の失踪届けが出されているという。無論、警察だけでの捜索は困難でロシアには他に捜索機構がないため、現在、民間のボランティア組織である「リザ・アラート」が活動している。
このグループが始まったのは2010年、モスクワから100キロの森で5歳の少女と女性が行方不明となったことからはじまる。この日はモスクワの市の日でもあり捜索活動を行うことが出来ず、インターネット上にこの情報が載ったとき、300人ほどのボランティアが集まった。
だが、残念なことにあと1日早く発見できれば助かったケースで、人が集まったところでどう動けばいいのか、情報は錯綜し、人を探すボランティアをまとめるプラットフォームが必要であると強く認識されたのである。
こうして、少女の名前でもあり、アメリカの自動捜索システム「アンバー・アラート」からヒントを得た名称がリザ・アラートなのである。
2017年第1四半期だけで、リザ・アラートには1317件の依頼があり、部隊はロシアの多くの都市にあり、ボランティアはひんぱんに活動している。事務所はなく、すべての仕事がインターネットを介して行われる。リザ・アラートの活動で警察とは異なる第一原則は、依頼に即座に対応することである。
第二原則は、金銭的な支援を個人で受けないこと。すべての寄付金は、携帯無線機、懐中電灯、携帯電話、コンパス、紙、テープ、車両、ガソリンなど、捜索用の道具や他の必要な品物の購入にあてられる。
「人の捜索で金儲けをしていると思われたくない」と、ボランティアは自分たちの立場を説明する。「警察に入った届け出のみをもとに活動し、12歳以下の児童は最優先で、去年は390件の依頼があり、警察、非常事態省の統一指令局と情報協力契約を結び、行方不明者の重要なデータすべてを提供している。
自分のプライベートな時間や家族を犠牲にして、常に捜索に向かう用意のできる人。さまざまな年齢や職業の人がいて、常時300人がスタンバイしているという。
この団体を知ったのは、私が今年観た映画の中でもベスト3に入る「ラブレス」の劇中、ボランティアとしての民間団体が、プロフェシュナルな捜索をしていることに映画のストーリー以上に引き込まれたのである。
この映画は離婚の渦中の夫婦が、次の新しい人生には子供は必要ではなく、自分しか愛せない人たちで、深夜、そんな両親のやり取りを聞き、自分は愛されてなかったことに知り、ひとりドアの向こうで少年がむせび泣く姿から映画は始まっていく。
多くを語られないが12歳の少年は何かを決意し、リュックを背負い、監視カメラの写らない道をさまよい、友人と冒険した基地のある広大の森の中へ向かっていく姿で消える。
両親はインターネットばかりに目をやって、愛人と戯れ、話さなくなった息子に関心を持たなくなり、翌日になって息子が学校に入っていないことにようやく事の重大さを知るのだっだ。
まさにここから、リザ・アラードが活動を起こすのであるが、軍隊のような整備、統制された無駄のない動き方で、大人に不信感を持つ子供への聞き込みに対して、時に優しく、時に高圧的にうまく心情をつかみ、家庭環境の複雑な子供たちの心のよりどころでもあったであろう秘密基地の入り口を聞き出すのだった。
映画の中に描かれた世界は、もはや世界中に起きている現代病ともいえ、常に愛されていたい、自分のことしか愛せない人々で、人が無関心であることの恐ろしさを描いている。
全編、寂寥感に包まれる映画だったが、80%以上の確率で生存状態で発見するといい、時間が勝負の中、泥水の中を這いずり回わるリザ・アラートのスタッフが懸命に活動する姿は胸を打たれる。
そして、この映画の公開によって活動が広く知られることになり、多くの寄付金、賛同者を集めているという。
日本とは違う風土なのか、森の中での行方不明が多いらしく、調査手法としてのアタックするべく詳細をもっと知りたいがネット上ではまだ余り出てこないものの、今後大きく何か飛躍するような団体で注目している。
ロシア・ビヨンド2017年 「行方不明の人を探し発見」記事より一部参考、抜粋