不倫事件簿4
2018年8月10日 カテゴリー:雑記
不倫に悩み苦しむ多くの依頼人はすさまじいまでの狂気を心に秘めて生きていることに気づくことがある。ある夫は寝ている妻の首に手をかけてしまいそうになる気持ちが抑えられないと言った人もいた。
この事件は世間では猟奇的とも言われ騒がれたが、徐々に追い詰められていった夫の心情と、そこまで深く考えていなかったであろう当事者達は罪深い。
妻の浮気相手は妻が働く先の弁護士だった。
不倫に気づきはじめた夫の執拗な追及から逃れるため、妻はけしてこれは浮気なのではなく、男からセクハラを受けていて、自分はセクハラの被害者であると告白したことで、取り返しのつかない事件へと発展していく。
妻が職場でセクハラを受けていたと聞けば、どんな夫でもその行為は許すまじとなっていくのは当然であって、妻の話をすべて鵜呑みにした夫は男と話し合いをする決意をした。
相手が弁護士ということもあったせいか、質疑応答の台本まで用意していたが、妻がその台本といわれる文面を男に何故か、誤送信したことで事を大きく荒立てることになる。
男の勤務先である法律事務所のドアを開けてしまった時、すでに言葉のやり取りなど不要で怒りから興奮を抑えきれなくなったのだろう。殴り倒し失神させた上で男性機能を失ったのである。
夫は元ボクサーであり、同じく法の道を進むべく勉学をしていた身の上でもあった。置かれた複雑な家庭環境もあって、暴走していくことは誰も止められないのであった。
弁護士になるのはお金を稼ぎたいのではなく社会正義を実現したいので企業法務ではなく、刑事弁護を担当したい。そんなまっすぐな気持ちを持っていた夫は事を起こしたのが弁護士となると、身が煮えたぎり心が複雑に絡み合っていくのである。
妻はこの修羅場に同席していて、即座に救急車を手配させたようだが、男性自身については完全に再生不可能にするために即座にトイレに流したという。
この事件の概要はネットで詳細が記載されているが、妻側の証言はあまり多く語られておらず、週刊現代がこの事件の経緯について非常に生々しいまでの陳述書全文をネットで公開している。
東北の震災のボランティアで知り合ったというこの夫婦は、夫は弁護士を目指し、一見どこにもいるカップルで一体どこから歯車が狂ってしまったのだろう。
裁判中に妻の嘘を知るも夫は今も妻を愛していて離婚をするつもりもない、それでも妻を愛していると変わらぬ愛情を切々と述べていたが、東京拘置所から釈放された時、妻からの出迎えの姿はなかった。
妻は夫の今後の応援はしたいと言いながら、新しい夢を叶えたく別の人生を歩みたいという記述があった。
ネットに書かれていることがこの夫婦の全てではないとわかっているが、怒りに身を任せてみたところで、その結果はわかっていたように何も得られないことにこの事件の哀しみがある。
妻の寝顔によからぬ気持ちになってしまう夫である依頼人は離婚が成立し、今は新しい人生を歩み始めた。
怒りの鎮め方などあるはずもなく、人間は怒りと常に闘っている。その怒りを堪え、涙し、それでも日常を狂わずに生きている人の力になれればと、いつも思う。