不倫事件簿3
2018年5月11日 カテゴリー:雑記
走行距離は1500キロ。
その果てしない距離は旅ではなく、仕事でもない。
流れる景色の中で彼女は何を思って走っていたのだろう。
リサ・ノワックは海軍兵学校を出て任官、その後、海軍大学院でテストパイロットとなり、33歳のときに宇宙飛行士として選抜、43歳になった2006年のSTS-121ミッションで宇宙へ。 大佐という地位にまで昇格し、翌年宇宙へ行く予定になっていた。
だがある事件を起こし逮捕され、もう宇宙へは二度と行くことは出来ない。
リサは同じ宇宙飛行士の同僚だったウィリアムと1年にわたって不倫関係になり、1年ほどが経った頃、一方的に別れを切り出されたことに不信に思い、留守中に合い鍵を使用し、メールを盗み読み、海軍大尉でもあるコリーンという女性の存在を知ったことからこの事件は始まる。
メールのやり取りとフロリダ州オーランド空港までの航空券を購入したレシートを発見し、空港に到着する彼女を襲撃するために計画を立てる。
テキサス州ヒューストンからフロリダ州オーランドまでは実に1500キロ(大阪~札幌間に相当)、痕跡を残さないために車で移動中し、ひたすら爆走したのか、トイレ休憩の時間も惜しく紙おむつを着用していたという。
この事件は紙おむつを使用していたことが話題になったが、職業柄、紙おむつを使用することがあったようで、宇宙飛行士の類まれな肉体と精神力で1500キロを爆走する。
車には催涙スプレー、金槌、ゴミ袋、空気銃を持ち込み、リサは空港でコリーンを発見、車に乗り込んだ彼女に催涙スプレーを吹きかけるが車で脱出されてしまい、すぐに警察に連絡され、あえなく逮捕となった。
宇宙飛行士はおそらく、世界中の人々から尊敬される職業だろう。
だが、どれだけあらゆる経験値を積もうとも、不倫という魔界に落ち込むと全ての機能を停止させるのか、取り返しのつかない行いを犯し、1500キロであろうと地の果てまで追いかける狂おしい姿になってしまうのである。
ただ会わないでほしいということを言うだけだったと主張していたが持参した品物と数か月前からストーキング行為をしていて、リサは3人の子供もいた19年間の結婚生活は事件を起こす直前に終えていたという。
全てを失い、仕事も手につかない、もうあなたしかいないという追いつめられた状況で、ビルがどんな言葉で別れを告げたしても納得させることは出来なっただろう。
別れを受け入れられないのはいくつかの理由があるかもしれないが、好きになるのがある日突然のように、嫌いになる時も突然やってくる。
その後、ウイリアムは海軍を退役し、アラスカで「アドベンチャーライト」というパイロットのインストラクターの会社を始め、コリーンもやはり退役し、現在はフリーランスのライター兼写真家としてウィリアムと一緒に仕事をしながら結婚している。
気になる記述を発見した。
精神医学を専門とする教授がニューヨークタイムズに載せた記事を抜粋する。
「宇宙から帰還した飛行士の中には、長年の目標を失い、一種の燃え尽き症候群に陥る人がいる」「彼らは(訓練のおかげで)宇宙でのストレスにはうまく対処はするが、飛行の後の(地上での)現実にはうまく適応できなくなる事例がある。また、感情や人間関係やの問題については、いつも上手に対処できるというわけではない」燃え尽き症候群の例としては、アポロ11号が初めて月に到達したが地球帰還後に躁病をわずらったことが挙げられる。また感情や人間関係の問題に必ずしも上手に対処できるわけではない例としてはリサ・ノワックの例がある。宇宙飛行士Wikipediaより
その後のリサの情報は見つからないが、現在、「Pale Blue Dot」というタイトルでナタリーポートマンと出演交渉中らしく、この事件を題材にする映画がつくられる。
Pale Blue Dotとは、天文学者であり作家のカールセーガンが人間はこの宇宙の中ではただの小さな点の一部でしかなく、ちっぽけな存在であり、未だ戦争や紛争が終わらない世界を哲学的に語っている。
映画は公開されたらぜひ見にいきたいと思っている。