単身赴任の夫の浮気
2017年10月18日 カテゴリー:雑記
かつて同じマンションに住んでいた奥さんが、ある日を境に心身が病んで行く姿を見てショックを受けたことがあった。
夫は単身赴任で週末しか帰らず寂しいけれど、妻としてここは耐えなければならないと、子育てと仕事に奮闘していた人だった。
いつからか、話をしても焦点が合わないので、手元をみるとスーパーの袋に入った酒があり、それは嗜むを超えた量になり、深夜何度も徘徊するようになっていった。
命の危険すら考えたが、どれだけ親しくても所詮他人である。心身を病んでいる人に、何かを適切にアドバイスすることや、納得させることが非常に難しいということを痛感した。
きっかけはEVの中で彼女が言った言葉だった。
赴任先のお土産をもらったことの礼を言い、降りようとした時だった。
「赴任先に女がいることはわかっているの」。
私は驚き、その話がどこまで真剣な話しなのか、どこまで突っ込んでいいのか思っていると、彼女は笑いながら急に行って驚かせようとしたら、夫は女性といた・・かのような話しをはじめた。
夫婦として、一大事となった妻の心構えなど今なら少しだけアドバイスが出来るかもしれないが、30代になったばかりの私は心を打ちのめされた人へ何も言えなかった。
眠れずつい寝酒に飲みだしたのが始まりで、大量の酒瓶をマンションのごみ置き場に捨てるのは恥ずかしいのか、隣のマンションに行って捨てていると言った。
一番信頼していた人に裏切られると一体自分は何を見ていたのだろうと自分を責めるようになる。そして、そんな夫もきっと言い分があるはずで夫婦となると、どうしてこうも全てが噛み合わなくなるのだろうか。
出会った時から、何かひっそりとした、じっと耐えているというような雰囲気を持った人で、誰かが汚したごみ置き場も、知らぬ間に掃除をしているような人だった。
結婚は人生のゴールではなく、始まりとはわかっていても、どう一緒に歩んでいくか人生の節々に突き付けられる問題は命果てるまであることに気づくのは不幸がせまった時でしかない。
心を全て何かに奪われるという姿は狂気で、人間のもろさを知るが、ある晩を境に妻は酒におぼれることに決別するというようなことを言い転居して行った。
それはやはり愛する子供たちとの暮らしを思ってのことだったと思われるが、家族でもない私には知る由もないだろう。
自由を謳歌出来る単身赴任という生活は、ついよからぬことを起こしてしまいがちだが、ほとんどの夫は慣れぬ土地や環境で孤独と結果を要求される仕事と日々闘っている。
単身赴任先を調査してほしいというのは妻がある程度状況を掴んでいる場合や、自宅の帰宅が少なくなり、突然の来訪を嫌がるなどがあるが、やはりどれだけ離れていようとも妻の感に勝るものはない。
結婚生活の半分以上を単身赴任していた依頼人の夫は、ある日突然に離婚したいと言い出したという。ここ数年は自宅にも帰らず、年末の帰省も元旦を過ぎると赴任先に帰るという。
調査の結果、夫は仕事を終えるとすぐさまに自宅近くにあるスーパーマーケットに入店した。待っていたかのように女性と待ち合わせし、仲良く今夜の夕食を選ぶ姿は熟年夫婦のようだった。
現実を知るということは二つの効能がある。
これまでの妄想や疑念が一切なくなることと、人生の再スタートを切れることである。
長年、不信に思っていた依頼人の心を映し出すような報告書となってしまったが、翌年の依頼人は、離婚へと進み別の地に転居したが、これまでとは違う分野の仕事に励んでいる。
調査の終えた依頼人にいつも伝える言葉がある。
来年の今頃、あなたはどんな毎日を送っているのか。少なくとも大きく環境が変わっても、今とは違う時間の中にいるはずでしょうと。
悩んでいる時間軸にいると、ソファーの上で同じことを何時間も考えている一日に驚かされるが、どれほど費やしても一向に解決せず、それが毎日であると病んでいってしまって当然だろう。
今日、明日をすぐさま変えることは無理でも、来年の今頃、一体自分はどうなっていたいのか。思い切って今の環境を変えたい人がするのが調査なのかもしれません。