探偵社に依頼するまで2
2017年8月08日 カテゴリー:調査記
夫の浮気を疑う時はその浮気が始まる前と始まった時と両方ある。
それは女性特有の動物的感とでもいうのだろうか。
ある女性をみて、これから夫と怪しい関係になるのではないかと予感する妻。
人はそれを妄想といい、証拠もないのに何をいうと思うかもしれないが、証拠などなくても妻自身が感じるフィーリングに勝るものはない。
妻は蓄積された夫のあやしい行動、言動をいつでも引き出せる能力を持っている。一つ確証を掴んだらジグゾーパズルのようにその隙間を埋めるピースを探し出すことに躍起になっていく。
今、世間を賑わしているM女について賛否両論あるものの、私はこれまで苦難の人生を歩んできた人だったと思う。
結婚した実業家の夫は婚姻してすぐに浮気をして、離婚しようにも多額の債務の保証人になっていたことに気づき、子供の重度のアトピー等、ストレスからひどい顔面麻痺になった人だった。
何とか自力で借金を返済し、その後、マンションの水漏れで大手ゼネコン相手に高額の慰謝料を要求したと非難されていたが、欠陥住宅でクローゼットに置かれていた、エルメスやバーキンのバックがいくつも被害に合ったとすれば当然の金額かもしれないだろう。
それは24年前の話になるが、間違ったことに対して不屈の精神でたたかってきたのである。やられたらやり返すというパワーは普通の人以上にあるのからこそ、芸能界に生き残っている人なのだろうと思っていた。
結婚の経緯は知らないが、苦難の末、子連れで再婚し、愛してやまなかった俳優であった夫を今やどん底に突き落とし、確証のない疑惑の女性たちを浮気相手として決定つけている。
受けた傷があるとするならば、最終的には金銭で解決することしか方法はないが、金銭ではなく、謝罪をすることを求めている以上、正しい確証が必要になってくる。
この成り行きを見て思うのは不貞調査をする上で気をつけなければならないことは、依頼人の妄想から生まれた相手女性に振り回されることだろう。
かつて、全く実態のない女性を浮気女性と確信していた妻がいた。明らかに妄想の世界にいて、現実を知ろうとしない妻だった。
だが、妻をそこまで追い詰めたのは過去に浮気をして、謝罪すらせず傷つけてきた夫で、多くの不幸が重なり、心を病んでしまい2時間決着のない話を聞かされた。
そんな沸々とした時間の中にいた時、天神橋筋商店街で老夫婦が歩いていた。ふたりは80代を超え、今にも倒れそうになるのを互いの身体でしっかと支え合っている老木のようにも見えた。
妻はやせ衰え巾着袋を携え、やや心ここにあらずという風で、一方、夫は杖をつきながら往来の激しい商店街で妻の身を守るように寄り添い手を握り合っていた。
結婚生活はかくも長き終わりの見えない旅をしているようで、皆、忘れてしまっているかもしれないが、その相手とは運命のように出会い、家族が増え、いつしか離れがたき存在となってそばにいることに。
人生は様々な苦難が訪れる。
M女のように徹底的にやりこめる人もおれば生涯辛抱し続ける人もいるだろう。
探偵社に依頼する人たちは個人レベルで事を起こす人達ではなく、最後の頼みの綱として混迷の中やってくる。夫への愛情はなくなったが、辛いが真実を知って気持ちを固めたいというがその本心ははたしてそうなのだろうか。
夫婦であることは何ぞやと毎回難問を突き付けられているが、人生未熟ゆえ答えは出ないが、ただ、あの老夫婦はどんな人生を歩んできたのだろうと思いをはせるのだった。