天神橋筋商店街12
2016年12月20日 カテゴリー：雑記
カフェカーテンを新調しようと天神橋筋商店街の5丁目のカーテンの店「キタオカ」に入店したがお金を支払う時に感動する。
店の奥に置かれた約100年前の木製のレジスターを使用し、子気味いい音を鳴らし、店主がつり銭を渡したからである。
私が知るに堺東駅からほど近い「カフェ伊太利庵」にも、素晴らしいレジスターが置かれているがそれは木製ではなく、いぶし銀のような実に美しいレジスターだったがこの店のレジスターも負けず劣らずのビンテージ品である。
古いものが調度品ではなく、あくまで地味にひっそりと置かれ商売道具として普通に使用されていることに、ここで買い物したことがうれしくなってしまう。
100年前、一体どんな客人がどんな品を買い、このレジスター前にいたのだろうと思うと心がざわめくが、店を出て商店街でいきなり若い女性に声をかけられる。
「飴ちゃん持っていますか？持っていたら1個ください！
どんな飴を持っているのか調べているんです！！」
そこに深い事情や意味があるのならば、私はどんなに急いでいたとしても立ち止まり、持参の飴を差し出しただろう。だが、その日に限って持っていなかった。
この女性は首からその趣旨を書いたプラカードを下げていたが、その後、一切姿を見かけることもなくネット上でもそれらしき情報を得ることは出来なかったが、一体何がしたかったのだろうか疑問である。
事務所やこの界隈にいる知人に、その女性について出会ったかどうか聞いたところ、誰もおらず、これはまさしく、おばちゃんの飴リサーチであり、私は即座にロックオンされていたことに納得した。
そして、最近になって感じるのは天神橋筋商店街で馴染みのお店がどんどん閉店してしまったことだろうか。残念に思うのはどこも美味しい店、良心的な価格で続けてきた店が閉店になってしまったことである。
濃い関西人がやって来るこの天神橋商店街では、商品の底値を知る客が多い。一度商店街を練り歩き一番価格の安いお店で購入するのが常で、価格勝負の最たる商店街なのかもしれない。
南北2.6キロ、店舗数600余りの日本一長い商店街は日々変化している。たまにしか来ない人には感じることはないだろうが、私は10年以上ほぼ毎日ここで過ごしているのでその微妙な変化に気づく。
依頼人との食事、お茶、事務所のスタッフとの会食、日々の買い物、猫のおやつ。
もう身体中全身に至って天神橋筋商店街の商品に覆われていると言っても過言ではなかろう。
来社面談の時、私はいつも谷町線の南森町駅3番出口の上がったところで、ご相談者をお待ちしている。
他にも指定できる駅はあるが、この場所は天神橋3丁目の商店街の入り口に位置し、探偵社に生まれて初めて訪ねる相談者の不安を紛らわせてくれる賑わいのある場所だからだ。
今、歩いている所が大阪天満宮への参道ですよと、商店街のよもや話をしていると数分で事務所に到着し、知らぬ間に相談者の気持ちをリラックスさせてくれるのが有難い。
勿論、新しいお店もオープンするのも楽しみだが、こうして変わりなく代々続いている店が生き残っていることの意味は、江戸初期、2・3キロの青物市場から始り、大坂市中における青果物の取り扱いを独占し、天満青物市場へと発展した所以だろう。
すでにクリスマス商戦と閉店セールも始まっている。おばちゃんの飴リサーチは協力体制でいるがその後、彼女とは出会わない。
現段階ではカーテン関係はこれ以上の購入予定はなく、「キタオカ」には買い物はないが帰宅の道すがら、私はつい店の前に立ち止まる。
店主は穏やかなまるで江戸商人のような味のある風情を持った方で、私はその傍らにある今も歴史を刻み続けるレジスターを見るとなぜか安心して、天六駅への足取りは軽くなり、天八まで歩き、時に長柄橋も超え、夕刻の川面の美しさを堪能している。
