祭の準備
2016年6月09日 カテゴリー:雑記
延々と続く山道の脇には漆黒の森があり、その道のりは街灯が少なく、ひとたびそこへ引きずりこまれたら、声を出しても誰にも気づかれないだろう。
自宅への帰り道、そんな闇の中をイヤホンをつけスマホを見ながら、無防備で歩いている若い女性をよくみかける。
ここは極めて人気のない山道へ向かう道で、過去よくない噂は聞いていて、「犯罪多発地域」と大きく看板も据え置かれている場所なのである。
なので、このような女性の姿を見ると心配になってしまうのは理由がある。
今月に入り、夫婦橋のたもとで、天神祭の船渡御のチケットや祭の案内板が張り出された。いつもこの時期に思い出す。
私は30年前、天満宮の裏に住んでいたことがある。
その日は天神祭の最中でマンションの周辺は人、人、人。
何故、近所のコンビニに立ち寄ったのか思い出せないが、暑い夜でタンクトップにショートパンツという恰好で、左手でアイスを舐めながら、右手で自室の鍵を開けた瞬間、背後から大きな熊に襲われた。
熊かと思いきや、毛深い若い痩せた男だった。
羽交い締めにされ首を絞められかけたが、その瞬間、奇跡的に向かい合う形になっているお向かいのドアが開き、残業をしていたデザイン事務所の男性が助けてくれた。
私は初めての一人暮らしで浮かれ、若く元気で調子に乗っていたのかもしれない。深夜にそんな姿でうろつき、一人暮らしなのに帰宅する際に一切の注意も払っていなかった。
自宅に来た警察官に。
どんな顔でした?
服装は?
年齢は?
・・色々聞かれたが数十秒のことだったので覚えておらず興奮して。
「カールおじさんを細くしたような・・眉毛も濃くて・・指には毛が・・。
熊みたいな男です!!熊!!」と呼吸困難状態で泣きながら言った。
男は背後から、けものようなにおいがして、両腕がボキボキ鳴ったので絶対に骨折していると思い、検査までしたが打撲だけだった。しばらくはいつまでも恐怖感が消えず、「熊・・熊・・」とうなされた。
熊男はコンビニにいた客だったようで、自宅までつけられ、ならば近所に住む人か、祭りで流れてきた人なのかもしれず、私はただ男性の持つ腕力の凄さにおののいたのである。
それでも幸運だったのは、マンションで親しくしていたのが、お向かいのデザイナーの男性で帰宅音のわずかな違いに何か窮地を感じ取ってくれたのだろうと今も感謝している。
都会にも田舎にも同じように危険なことは限りなくあって、常に神経を研ぎ澄ますことは出来ないが、悪行での男の力は女など赤子の手をひねるようなもの。
その後、職業柄、若い女性の家出案件などで発見に至るまで犯罪に巻き込まれる寸前の暮らし方をしているケースを見てきたせいか、多くの危機は若さゆえの気の緩みから発生している。
天神祭はもうそこまでやってきています。
そろそろ踊りやお囃子の練習も、路地裏から聞こえてきたら夏到来。
夏は最も犯罪が増える時期、どうかくれぐれもご用心のほどを。