映画 さざなみ
2016年5月16日 カテゴリー:雑記
久々にぜひとも見たい映画がある。
それは結婚45年周年の祝賀会を目前にしたある夫婦の数日間を描いた作品である。
原題は「45YEARS」
日本でのタイトルは「さざなみ」
主演 シャーロット・ランプリング トム・コートネイ
事の始まりは夫のもとに届いた元恋人の遺体が発見されたことを知らせるスイス政府からの手紙だった。当時、夫と恋人同士だったがアルプスをハイキング中、クレパスに落ち、50年ぶりに遺体が発見されたのだった。
それをきっかけに夫は過去に呼び覚まされ、酔いしれ、懐かしみ、妻はすでに存在しないその女性への狂おしいまでの嫉妬と夫への不信感を募らせていく。
発見された遺体には、おもちゃのような指輪がはめてあり、夫は記憶の中の美しい彼女のストーリーを妻に平然と語り始める。
祝賀会の帰り、夫にふさわしいスイスの高級腕時計を見つけ、夫に電話をするが、この電話に出ないことにじわじわと迫りくる不信感をつのらせていく。
「心のさざなみは次第に大きくなり、やがては堤防を決壊させる。妻の心は目覚め、夫は眠り続ける……」と表題された、この作品は鋭い切り口で結婚や愛について深く考察した2016年のイギリス映画である。
「彼女が生きていたら、結婚していた?」
「そのつもりだった」
思い出は美しく燃え尽くすものだが、結末のつかなかった関係は美しいままあたためられて、彼女も永遠に年も取らないまま美しい姿の彼女でいる。
過去の思い出を必死で掘り返そうとする夫に、妻はこれまでの価値観を問われているかのようで、深い悲しみに包まれていくのである。
かつて、相談者で40年前の夫の不倫をあることで知った妻がいた。そして、あくまでも調査依頼はその過去の浮気の全てを立証したいことにこだわった。
すでに今は暮らしも落ち着いて、孫も出来て好々爺となった夫でも、その時代に必死で一人で子育てをしてきた妻にとっては、今は終わっていても、知った以上それをなかったことにすることは出来ない。
夫婦でいることは究極に言うのであれば、死が二人をわかつまで一緒にいられるかどうか。相談者の涙していた姿をこの映画を知り思い出した。
この映画は不倫でも浮気ではないが、死体が発見された時から夫が過去に呼び戻されプラトニックに愛し始めていることへの嫌悪であり、妻への無神経さである。また、知らぬ間に封印されていた妻の溢れだした感情でもある。
ちなみこの映画を見たかのように書いてしまったが、まだ見ていない。
仕事が落ち着いたら、久しぶりにおひとり様シネマするつもりでいる。