家に帰らなくなる夫2
2016年5月09日 カテゴリー:調査記
いつからだろうか。
夫はデザイン関係の自営の仕事をしていて、深夜まで仕事をしていることもあるせいか、週に1回のペースで帰宅しなくなったという。
かつては夫とは一緒に仕事をしていたこともあって、そんなこともあるだろうと思っているとズルズルと事務所に寝泊まりするようになって、あっという間に帰って来なくなったのだという。
事務所ではなく別の居場所があるとするならば、妻もこれから先を真剣に考えなければならない。
不倫をすると、不信に思われるはずなのに自宅に帰らなくなるのは、残された良心から妻の目が見られなくなり、家族とも普通に話せなくなるからなのではないかと思う。
人間は動物的が鋭く、家族だけの暮らしの中で突然他者が入り込んでくることに女性は特に敏感で、深い関係が始まる前から夫の違和感を感じる女性も多い。
夫との関係は大なり小なりそれなりの苦悩はあっても、不倫にはまり家庭を捨て去ろうなどしない人だと信じていて、追いつめすぎてもいけないと長年耐え忍んでいる人も多い。
若くして結婚した夫もこれまで懸命に仕事をして、何不自由なく家族を養ってきた自負があるのか、この身勝手な日々でさえも正当化しようとし始める。
一度、口火を切るとお互いの思いの丈をどこまでも激しく罵り合い、夫は暴力的になり、肝心なことはだんまりになる。妻も興奮して過去の夫の失態を織り交ぜ、その話し合いは何ら一歩も進まないのである。
夫がふと漏らした何不自由なくの言葉が刺さり、妻自身も懸命に頑張ってきたことに言い知れぬ淋しさを覚えるのだった。
調査依頼の背景にあるものは夫の隠された真実を知りたいだけでなく、ひとつのどこにもある家族がいかにして再生するのか、或いはどう終止符を打つのか。
そして、その行く末が当初の面談時では見えなかったのものが、調査という結果で徐々に明確に見え始め、依頼人自身も変化していくが、それでも躊躇しながら時間ばかりが過行く。
私は依頼人にいつも教えられているのかもしれない。
夫婦という関係の脆さと憎しみの底にある残された愛情深さを。
調査は短期間で終了しても、その後、依頼人の方とは長いお付き合いになることもあります。その不倫の目撃者でもある相談員の私に決着を伝えたいのだと思います。
2年前の依頼人の妻は、ようやく決着が付き、その報告をしたいと私に会いに事務所のある南森町駅にやってきた。離婚し再就職先は関西から遠く離れた場所にある。
また、その再就職先も非常に個性的で一緒に話をしながら、笑い、涙し、また笑いである。
商店街を歩くと前回は何も見えなかったようで、あらためてこの商店街の活気に気づき、家族のお土産は何がいいだろうと、帰りはゆっくり買い物して帰りたいと天満駅に向かって歩いて行った。
生きることに絶望し、目に見えぬものに恐れていた人がこうして、新天地に向かい新しい風が吹き始める人の姿を見るのが、私の仕事の決着であり、相談員冥利につきます。
ご相談ください。
お力になります。