女探偵
2016年4月27日 カテゴリー:調査記
初めてお出会いする相談者の中には、私が探偵として動いているのかと勘違いされる方もいるが私は相談員であってけして女探偵ではない。
調査業は圧倒的に男性社会で、調査員もほとんどが男性で構成されており、他社の相談員も男性の方が多いように思える。
テレビなどでは女探偵はネタになりやすいのか面白可笑しく描かれるが、調査員は特に勤務時間が不定期で土日は先ず休めないことが多く、かつて女性調査員、すなわち女探偵に多く知り会いがいたが、皆、退職して現在は違う職業についている。
今でも忘れられない言葉がある。
探偵志願の若い女性で短期間で退職する理由を聞くと。
「彼氏とデート出来ないから」だった。
男性からするとそんなことでと反感を買うかもしれぬが若い女性はなおのこと人生において非常に重要な問題と直面するのである。週末や土日、連休、クリスマス、イベントのありそうな時は多忙で、休日を取っていても駆り出されることもある。
女性ならではの役目もあるだろうが映画やドラマのようにおしゃれな装いで尾行し、素敵なお店に潜入したりすることは先ずありえない。
夏は暑く、冬は寒い。
長時間張り込んでいれば住人から苦情を言われ、悩める依頼人のための仕事をしていながら不審者扱いを受けるため、手を変え品を変えプロとして職業を全うしなければならない。
また、この職業は時として普通のサラリーマンの人たちからするとブラックともいえる時間の中に身を置いてしまうことがある。
例えばどれだけの時間設定で確証がつかめるのか?
今日の仕事はいつ終わるのか?
ある程度の予測の時間の中にいるが依頼人自身の予想出来ないこともあり、当初、数時間の予定の調査が動き出せば24時間に近い時間の流れにのる。
交代せず一気に結末まで追い続け、その長き時間はようやくつかんだ対象人物の尻尾であって、捉えて離さない佳境へと向かう調査の醍醐味でもある。
また、調査に参加しない相談員も同じような時間の中にいる。
調査員から伝えられる刻々と変化する状況が頭の中では映画のようにうつされて、稼働中の写真もリアルタイムで確認することが可能なのである。
ネガティブなお話しばかりもいけないが、どんな職業にもある理想と現実の世界は困難であればあるほど達成感に包まれ、言うに言われぬ苦労も依頼人の涙で救われます。
ブラックな時間の中にいても、それが終われば自由な時間も多くあって信頼出来る仲間さえいれば、過酷な現場の仕事をどんどん楽に面白くすることも出来ます。
17年前になるでしょうか?私が知る女探偵の人たちが必ず持参していたものがあった。
それは日焼け止めクリームと蚊に刺されないスプレー。
それでも女探偵は真っ黒に日焼けし、両足はやぶ蚊に刺されながらも奮闘していた。不覚にもうら若き乙女のその姿に私は泣きそうになったことを思い出す。
きっと本物の女探偵はどこにも誰にもアピールすることなく、女性らしく、密やかに、ただ普通にこの仕事と日夜格闘しながらいるのだろう。
そんな女探偵に心からのエールと。
心からのお疲れ様をお伝えしたい。