帰宅への長き道のり
2016年2月02日 カテゴリー:雑記
最近の帰宅コースは北浜ライオンに触れ、大阪なにわの新旧ビル群を眺めながら帰るのが少し遠回りだが一番のお気に入りコースになっている。
そんな中、大阪を象徴する靴店「もうあかん、やめます!」の垂れ幕を20年以上揚げて営業してきた「靴のオットー」が2月20日に閉店することを知る。
西天満の交差点の角に位置する看板の「大阪一安いとうわさの靴店」は、関西人では知らぬ人はいないはずで、もう、あかんと言いながら40年間続けてきた店主。体調を崩し、店頭に立ち続けることが難しくなったらしい。
私は35年前、この店でフランス製の真っ赤なパンプスを購入したことが思い出される。当時の店舗は今のような泥臭さはなく、海外のブランドのB品を一部置いていた。
信号待ちで、この黄色い看板が色褪せていく姿は不況の荒波にも負けぬ関西人らしいねばっこい経営を眺めるようで、かっこつけない大阪人らしさがあったが、その小さな名物店がついぞ消え入る。
それはある夕刻のことだった。
このたどり着いたある町の風景に惚れ込み、某商店街の南側に残された古き良き町並みを眺めていた。
そこは神戸異人館を思い出すレトロチックな建物で都会の喧騒のど真ん中に歴史的建造物のように何軒かが存在することに私は以前から興味を持っていた。
夕方になるとぼんやりと、ある家は鹿鳴館のような灯りがステンドガラスの窓から見えて、私はいつまでも眺めていたい気持ちになる。
約束の時間が迫り、そこを離れ少し小走りになっていたが段差などないのに私は足を取られ大きく股割れのような姿で、床がタイル張りだったため大きな音を立てて私はすっころんだ。
ただ驚き、足元に目をやると、水分を含んだ菊菜のような葉っぱが数枚まとわりついていた。恐るべし、葉っぱ。
こんな小さな葉っぱ数枚に足元をすくわれるとは納得がいかぬが見渡すと、そこはスーパのごみ置き場で、どうやら捨て置いた野菜箱の中からこぼれ落ちたのであろうか。
叔母が似たようなケースで股関節を骨折し全治半年だったことを思い出し、同じようにこの道を通過する老若男女のために葉っぱを拾いゴミ箱に入れた。
背後で実直そうなサラリーマンが思いきっり笑いたいのを必死でこらえていた。私はとどめに葉っぱを拾いあげ、パントマイムのように犯人はこれですわ!と伝えると大きな声で笑ってくれた。
新年早々、足をすくわれるという・・何か嫌な気分に包まれたが、この若人のいつまでも続く、高らかな笑い声できっと浄化されたに違いない。
帰宅への道のりは約40キロ。
車内は読書タイム。
徒歩は散策と称して楽しむことにしている。