カマかけたらクロでした
2015年11月24日 カテゴリー:雑記
浮気を暴く指南書は山のようにあって、時々手に取っても購入したことはなく、今回タイトルに惹かれてWEB購入した。
この本はWEB漫画家である、うえみあゆみの夫が浮気をしたことの実体験を書いた漫画である。あくまで妻側からの観点で、夫の浮気に至った経緯は描かれていない。
夫はテレビ制作会社勤務。昼夜を問わず仕事で帰らない日が多く、まだ小さな娘と妊娠中でもある28才の著者である妻は長年、経済的にもジェットコースター的な暮らしと母子家庭のような生活を強いられていた。
DV、ギャンブル、借金、親族の問題、浮気。 結婚とは一緒に暮らすことで実は知らなかったパートナーの一面に気づかされることも多い。
大なり小なり、どんな夫婦にでも抱える問題はあるだろう。
だが、そんな暮らしの中で夫が浮気していることを知って、ショックを受け何とか尻尾を掴みたいとカマをかけるもクロであっても、その全容を知ることも謝罪もなく迷走していく妻だった。
離婚を決意するまでに、探偵社、弁護士に相談し、市の無料相談とあらゆることを行っているが、有料の弁護士は親身になってくれなかったと書かれているが、1時間足らずの相談でいきなり明るい未来への約束が出来るはずもない。
気になったのは探偵社と別れさせ屋がセット料金のように書かれていて、これについても、あくまでテレビのバラエティ番組の受け売りでしかなく、真に受ける方がいるかもしれないので困ったものです。
全編、コミカルなタッチで面白おかしく書かれてもいるものの、一切浮気を認めない、それはお前の気のせいなんだと、間違いなく起きていることを無下に扱われる悔しさが、徐々に正常な判断を失わせていく。
何より妻は身重であり、その身体的、精神的疲労は計りしようもない。
カマをかけながら夫の狼狽える表情をしっかり確認することは女性にしか出来ない芸当で、ジリジリと追いつめていくが、この果てしない攻防を繰り返し別居生活になるのである。
私は依頼人を見るような気持ちで読んだ。勝気で激しく、怒りで修羅のようになってしまった妻の心の底を思う。その心は冷たく、はかなく、今にも崩れ落ちそうな姿で辛うじて立っていることを。
父を慕う小さな子供の姿にハッとさせられ、助産婦さんの心ある優しさに触れ、相手をやり込めるだけに疲れ果てたのか、もう一度やり直そうと考える妻だった。
この本を読んで一番私の心に響いたのは、著者が冒頭に書いている、ふたりの心を切り離すもの。
「さみしさ」
それこそが、最大の苦しみであると。
どんな浮気もきっと単なる火遊びが、確かに繋がっていた家族をある日突然こうして簡単にも一刀両断に引き裂かれることの怖さをただ思い知るのである。
人生は誰かの書いた本のようにはいきません。
結論の付け方、相談相手、人それぞれです。あくまで参考に。
この著者、転んでもただでは起きないタイプで続編もあるようです。
タイトル カマかけたらクロでした
著者 うえみあゆみ
出版社 メディアファクトリー