けものたち5
2015年10月01日 カテゴリー:雑記
明け方、ただならぬ「圧」を感じ目覚める。
目を開けると黄門様がそこにあった。
通常時ならいい。
その身を交わすこともできよう。
熟睡し、油断している時に何故、私の顔面にこすりつけるのだろうか。
振り払うもその愛情表現はやり始めたら止められないのか?
何度も何度も黄門様を私の顔面に公開してくるのである。
私は愛猫の背中に顔をうずめるのが大好きだ。
耳をすますと小さな命の鼓動が聞こえ、そこからあふれる出す香ばしいトウモロコシのようなにおいがするのはなぜだろう。
だが、愛猫もその行為を誰にでも許しているわけではなく、信頼する者だけに与えられたラブ&タッチ。
嬉しい時や関心を引きたい時、マーキング行為である尻尾をバイブしながら一直線に立たせ、これでもかと黄門様を我が身にこすりつけにおい付けをするのである。
依頼人の自宅に調査の報告に伺った時だった。猫を飼っていると聞いていて、その出会いを楽しみにしていたのだが、一向に姿が見えない。
ふと気配を察すると私の黒革のビジネスバックが膨らんでいて、中にむっちりした黒猫が入っていた。
入っていた資料をすべて机上に置いたので鞄は空っぽだったのだが、声も出さず一体いつから潜んでいたのだろう。
私はジッパーを締めたり、開けたりしながらそこで遊びまくった。
そして、お別れしてから発覚したことある。
私は出かける前に小さなスイーツポテトを事務所でもらい、ラップに包んで鞄に入れて持ち帰ったのだが、クルクルときれいに巻かれたラップだけが残されていた。
チョコレート中毒に似た症状を発生したらいけない。なので依頼人に念のため報告しておいたら、我が子の行いに恥じ入るのと、なぜか突き抜けた笑い声となって、やはり愛猫はいつでも飼い主を笑わせてくれる。
自室のソファでまったりしながら、ショートケーキを食べ終った時だった。
電話が鳴り、会話は20分ほどだったと思うが、はたと気づくと銀紙にくっついていたはずのクリームが洗ったようになくなっていた。
そこに何かがあれば口に入れたい生き物で人間の数十倍となる甘味を身体に入れてしまうことは命の危険なので今後は絶対に気をつけねばならんと肝に命じる。
ゆえ、依頼人の方で猫や犬を飼っている人はすぐわかる。会話の端々や携帯の画面に必ず写っていることと、背後に聞こえる鳴き声で。
しばし、猫談義、犬談義と飼い主あるあるに話が咲く。そして、飼い主の家族の何かを感じ取った彼らは、はしゃぎを一切やめて、顔を見つめ、ただ静かに 寄り添ってくれるのだという。
物言わぬ生き物であるからこそ、その感情を敏感に読み取れるのだろう。私自身、時には感情の高ぶりがちな仕事の中で、この無垢なまでの有りように救われてきたのかもしれない。
深夜のことだった。
またもや尋常でない息苦しさで目が覚める。私の胸の上で大きな7キロ以上のデブ猫が全力でヒップアップしながら黄門様を公開していた。
寝る前にもそのダンスは存分にしていたはずである。つい、先ほどまでイビキを立てて爆睡していたはずだった。即座に抱き上げ、顔をこちらに向けて、トントンと背中をたたき落ち着かせ再度眠りにつかせる。
いい加減にしなさいよと注意をすると、その声に過剰反応したのか、やおら立ち上がり背を向けて、より激しくヒップアップしながらやってくる。
睡魔と息苦しさと可愛さと格闘して夜はふける。
これぞまさしく、けものたちとの共存だろう。