人を尾行すること3
2015年9月07日 カテゴリー:調査記
初めてこの職業を始めた時、誰かを尾行することを受ける仕事の得体のしれない怖さ、ためらいがあった。
ただ、なぜそれを引き受けるのかというと依頼人の混迷が深く、その内容から尾行するしか方法はなく、すべてが終わった時、切り開く世界が始まるからです。
人間の行動はわからない。
たとえ一本道が続いていても、道を間違えたと踵を返すこともある。対象人物が道に迷えば、それを追尾する調査員も同じ道をたどらなければならない。
最近の都会のオフィス街やタワーマンションは要塞のようでセキュリティも高く簡単に追跡することが困難な場合もある。
袋小路のような住宅地や、四方八方に出れるような家を見るとつい仕事に置き換えて、尾行する場合、調査員は大変だろうなと思ってしまうのである。
私は依頼人によく聞かれることがある。
「なぜ探偵社に入ったのですか?」
職業である探偵について、この世の中に存在していたことすら気づかなかったほど無知で、昭和世代が見ていたドラマ「探偵物語」さえ、あまりしっかり見た記憶すらなかった。
探偵に興味を持って入社する人もいれば、更に探偵学校に入学してまで探偵になりたいという人たちもいて、テレビなどでも探偵がスポットを浴びる番組もあったようだが、私は全くそれらも見ていなかった。
人生とはわからないもので、私は死ぬまで夫と一緒で専業主婦でいるだろうと確信しながら生きていた。
結婚生活は約14年、結婚した時から熱心に家計簿をつけていて、いかに食費を予算内でおさめるかを考えることが楽しい日常だったが、ある日、13冊目からそれをつけることが出来なくなる。
離婚して、フルタイムで働けるならばと求人募集から面接を受け、私はのちに面接した上司に調査業が全くわからなかったため、20分の面接時間を大幅に超えて、質問責めにした記憶がある。
どんな職業も何かしらの興味と縁のようなものと繋がれているだろうが、私はまっさらの状態で依頼人と同じように調査業を初めて知り、スタートしたのだった。
この世の中には探偵にお願いしないといけない相談にあふれていることに先ず驚き、その内容は多岐にわたり、17年前、緊張しながら初めて取った相談電話の女性の声も息遣いも内容も私は今でも覚えている。
相談電話は声しか届かない。
話が深くなるとある程度の風貌や、きっとこんな方だろうと想像しながら面談でお会いするが、やはりそのイメージは狂うことはなく、柱の影でいたとしても探し出すことが出来るのだった。
相談者があわてふためく状況でいることは致し方なく、受ける我々はどんな内容であっても動じず、一歩先にいて、信頼を頂戴すること。
世の中が狂気的な事件ばかりで、探偵はそれに絡むような事件もあるものの、それは探偵ではなく、どんな世界でもあるもどきでしかない。
少なくとも私の短い経験から現在まで知るに私の周りにいる調査業の人たちは身を削りながらこの職業を続けている。
そして、世間のイメージとは全く違って本物の探偵はアウトローではなく、ただ地味で大変で、家族の家出や浮気調査などの修羅場を長年職業として見続けているせいか身に染みて家族の大切さを知っているので愛妻家が多い。
知らぬ間に仕事は普通の事として受け止められるようになっていくも、トラブルの多い業界の中で、これまで問題なくやってこれたのは、ひとえに信頼出来て、結果の出せる調査員がいたからに尽きるでしょう。
至って普通の探偵社ですが、かけがえのない家族の中で暮らしていることは相談者の方と同じです。
ご相談ください。
お力になります。