素行 笑顔の夫
2015年4月20日 カテゴリー:調査記
ここ数年、夫婦で出かけることや顔を見て話したことが全くないと言う。
自宅にいても伝えたいことはメールですませている。
夫は夕方メールで「今日は帰らない」。
妻の「了解」のメール。
携帯電話が今ほど普及してなかった時代。
テーブルの上に、このようなメモ書きを互いに置いて数年生活している人がいたことを思い出す。
こんな生活が普通でないことはわかっている。
この短い文面を送信するまでに、何度も夫と話し合いを試みる努力もしていた。
もはや返信すら辛くなった妻は最後の力を振り絞って、調査の必要性があるとしてやって来たのだった。
言葉のやり取りでお互いの心の中を知ることが出来るので喧嘩をする夫婦はまだ救いがある。このような環境に長くいればいるほど鈍感になってしまい、もう二度と戻れなくなることを依頼人は知っていたのだろう。
何がきっかけだったのだろうか。
夫は転職してから妻のたわいもない話を疎ましく接するようになったという。
対する妻も子育てに疲労困憊していて、どんな夫婦も差し掛かる様々な問題でお互いに対しての関心や優しさが持てなくなる時がある。
私はレストランやスーパーで知らぬ間に夫婦を眺めてしまうことがある。
一緒にいてもお互いに何か投げやりな態度でいる夫婦が多いが、関心がないからこそ、長年一緒にいられるのである。
ふとした瞬間、不機嫌そうに思われた夫婦が何かで共鳴して笑顔になっていた。それは夫婦にしかわからないこれまでの共有した時間の笑い話であって、そばにいる子供たちもつられて笑顔になっていく。
夫婦でいることは、時には穏やかでいることが出来なくなることもあるが、この小さな共鳴と笑顔が長い結婚生活では一番大切なのだと今更ながら感じてしまうのである。
依頼人の夫は笑顔だった。それを見つめる相手女性も笑顔。
だが、夫は自宅に近づくにつれ険しい顔つきに変化していくのだった。
報告書の中の久しぶりの懐かしい夫の笑顔を見て、その関係の深さを知り、ようやく前に進める準備を始め、直ぐに弁護士事務所に一緒に向かったのだった。
ご依頼をした方、全てが離婚するわけではありません。
その笑顔の意味は妻にしかわからないもので、女性と会っている夫の姿は最も重要なシーンであると思っています。
人は信頼出来る暮らしの中にいて、笑顔でいられるのだと思います。
勿論、本物の暮らしを続けて行くのは笑顔だけでは乗り越えられないこともあります。
何故、夫は笑顔を見せなくなったのかを知るために。
或いはもう一度取り戻すためにはどうしたらいいのかを知るために。
ご相談をされるのかもしれません。
お聞かせ下さい。
お力になります。