北桜のビーズ
2015年3月18日 カテゴリー:雑記
「小さなビーズの穴にテグスを通すことで、立会いの一瞬にかける集中力が養える」
製作者のスペックは身長190㎝、体重170キロ。
得意技は右四つ、寄り。
最高位は西前頭9枚目(2001年7月場所)
愛称は「熱い男北桜」、現在は式秀部屋師匠として後進の指導に当たっている。
2006年3月場所、NHK大相撲中継の番組中、中入りの時間に「熱い男が行く!北桜」と題した特集が組まれ北桜の趣味のひとつであるビーズ編みをする様子が紹介され、念願の化粧まわしを編み上げ、現在、男性ではビーズ作家として第一人者らしい。
巨体が生み出す、独自のテクニック。
それがNHKおしゃれ工房でわかりやすく解説され、テーマは「ビーズに込める一粒入魂」。この放送より全国のビーズ愛好者から感謝のお便りが絶えなかったという。
NHKおしゃれ工房は好きなので、時々拝見するが、初めて知り、この相撲中継も見逃したことを非常に残念に思う。
何より、相撲の世界にいる方がビーズ手芸家として活躍をされていたことに驚く。
その巨体、指の大きさ、偏見かもしれないが男性がされていることに。
作品の全てが、ラブリー&スィート。
図案の構成から見ると若い女性が作ったものしか思えない。
その巨体がちんまりと座り、ピンクの小物の中に囲まれて、大きな太い指先で小さな穴に、ひとつひとつビーズを差し入れる姿は、ギャグのように思うが実に愛くるしいお姿である。
このビーズの世界へのきっかけは給料を貰える関取になったのが遅く、彼女(現夫人)へのプレゼントを購入するお金がなく、ウケねらいもあって自分で作ったことだという。
集中と根気を要する面白さにはまり、何よりビーズとの触れあいがストレス解消になって、どんどんとのめりこむようになったという。
己の肉体を変化させて、日本古来の神事に則った熱き戦いの中にいたはずの北桜。
だが、人生の半ばで、その出会いに触れたことで、それらがこれまでの生きてきた全てと重なりあって、ハーモニーされゆく。
ちなみに2007年の国技館で行われた北桜のビーズ作品のディスプレイのテーマは「お姫様のお部屋」。
その後、ある作品で、満身創痍で数千粒の織りなすビーズ大作を仕上げてから、なんと、3粒足りないことに気づく北桜。
わずか3粒でも、グラディーションは当然、完璧でなくなり、再度一からやり直したという。
眩暈と怒りすら覚えるが、まさにこれこそが一粒入魂。
やはり精神を肉体を鍛えてきた人は違う。
常に入魂と向き合いながら生きている。
そう思うと、どんな人にでも実は隠された素晴らしい能力があるように思えてならない。
人生は愉しく、愉快で、かつ、いつも何かの始まりが準備されているように思えるのだった。