日本のお父さん
2014年11月25日 カテゴリー:雑記
その男性を知って10年以上になるだろうか。
私は秘かに心の中でお父さんと呼ばせてもらっている。
お父さんは決まった時刻、コンビニの商品を荷卸して数分で納品して出発する。到着時間は正確で私はいつも時計のようにそのトラックの到着を眺めるようになった。
荷台を見ると、まだ半分ほどの出荷品が見えた。
ここからどこかへまた移動するのだろう。
夏の猛暑は首にタオルを巻きつけ、冬は完全防備の姿でいたが何年前からだろう?
お父さんが腰にコルセットをしていることに気が付いた。
スムーズに足が動いておらず、少し足を引きづりながら台車を動かしていた。髪には白いものが混じり、絶えず身体を酷使しているせいか、以前より随分と痩せ型になっていた。
昼夜逆転の仕事は時間とのたたかいでもあって、間違いなく定刻に商品を届けること。コンビニにたむろする人や車、自転車をよけながら行うことは当然のことであるが、不可抗力のクレームや関わる人間関係。
どんな仕事もこの仕事でいいのかと続けることの意味を考える時がある。
何故、仕事をするか。
家族のため、子供のために尽きる。
独身の人は様々なチャレンジが出来るだろう。だが家庭を持てば、確実に収入を得る仕事を選び、あきらめなければならない夢もある。
好きな仕事に巡り合うことは、叶わない恋愛のようだとあるブログに書かれていた。そのブログでは自分の好きだった仕事が出来なくなった苦悩が切々と書かれていた。
人生の全てを覆い尽くす時間は仕事の時間かもしれない。
その選びとった職業に苦悩し、称賛を受け、様々な人間関係にまみれ、普通に続けることが、どれだけ大変であるのかを葛藤するのは50を過ぎたあたりだろうか。
お父さんの仕事との向き合いは、いつも真剣で丁寧。
おしゃべりなコンビニのおばちゃんが話かけても、寡黙である。
そして、時間に追われているせいか、必ずコンビニの時計を一旦目視して、次へと足早に移動する。
24時間存在するコンビニに、いつもそこに確実に購入出来る品があることを当然に思うが、このお父さん達の真摯なまでの仕事があるからだ。
だが、夫がどんな仕事をしているか妻はわかっていても、その大変さを体感することは出来ない。
家に帰ると疲れ切り、全ては任せたと何も話さない夫に妻は一体何を考えているのだろうと、小さな諍いから、ことによっては大きな喧嘩に。
しかし、それも要らぬ心配。
お父さんがある場所で休憩しているのを偶然見かけた。
私は一瞬だけなら、許されようとのぞいてしまったら、ポットのお茶を飲みながら、いかにも愛情のこもった弁当を食べていたのだった。
こんな夫なら妻はわかっている。
お父さんが家族のためにどれだけ頑張っているかということを。
それでも私はこのお父さんに、よくぞここまで頑張ってこられましたね。
腰の具合はどうですか?
お父さんのおかげで毎日、ここで安心して買うことが出来ます。
これは本当にすごいことなのですと。
そう伝えたくなる。
紆余曲折、生涯続けられる仕事が本物の職業。
日本のお父さん達、本当にお疲れ様です。