素行 浮気調査 その後
2014年11月11日 カテゴリー:調査記
伊集院静氏のコラム「悩むが花」は、いつもチェックしている。
どんな悩みも人生を彩る花のように達観して伊集院氏は言う。
「過ちを犯さずに一生生きられる人間なんかいない」。
その言葉は、若輩者へのエールである。
だが、その過ちを赦すことが出来たならば、どれほど人は救われるのだろう。
生と死、修羅を経験し生きてきた彼ならば乗り越えることが出来るのであろうが、たった一度の過ちであっても、なかなか赦すことの出来ないものの一つが不貞行為である。
人間の愛情は複雑で、そして究極にシンプル。
愛情の変化、不信な行動はいち早く察知出来る。
その迷いをあっさりと白状すれば事はけして大きくならないだろう。
きっとこれぐらいなら未だ大丈夫だろうと、どんどん深みに入って抜け出せなくなり、シンプルであったはずのミステイクがあらゆるものを巻き込んで事を荒立てるのである。
夫婦でいると顔をじっと見なくても、そばにいるだけで波動を受けて相手の気持ちを感じる瞬間がある。
機嫌がいいのか、悪いのか。
調子がいいのか、仕事がうまくいっていないのか。
その瞬間は毎日365日、お互いに離れるまで続いていく。
朝、夫の出掛ける姿で不安を覚え、帰宅した姿で納得する。
この果てしない時間を夫以外の関わる人間関係で、また大きく変わって来る。家族という形が大きく成長しながらうねり、しなやかに乗り越えて行く。
幸福は何か問題が起きて、当たり前の日常を徐々に消し去って行く。神様はいつも幸福である時間をけして今だとは教えてくれない。
誰もが不実な夫とはこれを機に離婚を考えた方がいいと言って、依頼人である妻も今回の不貞の結果で離婚の準備をしていた。
だが、妻はしばらくすると、充分に苦悩しながら得た答えは。
自分がおばあちゃんになった時、アホやったねって笑い合いたい。もう一度夫婦をやり直したい、この建てた家の縁側でやっぱり夫と一緒にいたいのです。
涙ながらにそう私に言う依頼人は未だ30代だった。私はこの妻の声を涙を夫に伝えてあげたくなってしまう。
その答えは一時の感情ではなく、調査の結果で見えてきた答えであったのだと思う。
私は何十時間依頼人と話を来たとしても、誰もが思う普通の暮らしの意味や、夫婦の関係は他人にはけしてわからないものだと思い知るのだった。
伊集院氏のように、そう思える人は哀しみを知っている人だろう。
何かを失っても、けして、そこは空虚ではない。失ったものを埋めるべく、これからをどう生きて行くか。
そんな依頼人と関わった私達も選ばれし人間なのだと思っている。
その後の経過を聞き、その行く末は見守ることしか出来ずもどかしいが、依頼人の人生は依頼人のものだ。
結果を知ってからの進むべき道へは果てしない時間のように思えたが、いつしか完全に終わる時が必ず来る。
あれほど私は逐一どうしたらいいですか?
朝晩、依頼人からのメールが送られてきたが、ある日から送られて来なくなった。
これは依頼人がようやく自分自身の足で歩みだしたのだと安心している。
調査業の仕事は人間不信にならないかと誰かが言ったが、複雑な人間の心の奥底にある本物の愛情を際立たせはっきりと見せくれる稀有な職業に魅せられたのかもしれません。
よくぞここまで頑張りましたね。
次回会う時は、私はスーツではなく普段着で。
友人としてお話を聞かせて下さい。
そうメールを返信したら、直ぐに返信が送られてきた。