天神橋筋商店街8
2014年9月26日 カテゴリー:雑記
「だが断る」
「何もせんとこうなる」
「金曜日から本気出す」
「本物の眠りがほしい」
これは某雑貨店の男物の黒のTシャツの背後に書かれた言葉である。
いつか大切な人へのプレゼント用に、その短き言葉の深さに相槌を打ちながら、いつも眺めている。
この店は「卸のまんま」という実に濃いHPを立ち上げていた。
タイガースグッズからハワイアングッズ、店内は老若男女のウエアが所狭しにあり、店主はどこからみても噛みごたえのある関西人の味を持った方である。
また、スポット的な店舗では、うず高く積まれた雑貨の足元に古い映画のポスターを発見。トリュフォーの映画の作品はオサレ雑貨店では数千円はするが500円だった。
悩んでおればもう二度と出会えない。
「大人は解かってくれない」「勝手にしやがれ」を購入。
何よりこの商店街を歩く時、必ず彼が店にいるかを確認している。
彼は忙しいのか、体調をくずしたのだろうか。姿があまり確認出来ない。
逞しい均整の取れた体、絹のようなしっとりした光輝く肌。
優雅な振る舞い、目は一点を見つめ微動だにせず、彫刻のような立ち姿でいる。
彼は茶色のラブラドール・レトリーバー。
名は知らぬ。
私はいつも姿を見つけると触れたい、一緒に土手を転げ回りたい衝動を抑えることが出来ないでいる。
たまらずそこでスカーフを購入し、店の者に気づかれぬようにそっと彼に愛していると呟いたがずっと尻を見せ寝ていた。
大型犬がいることは躊躇う方もいるかもしれないがリードに繋がれ、ひっそりと奥で休んでいて、たまにバンダナを巻き接客をしているようで、そのまなざしに魅了されたファンは多い。
また、ここは安いお店ばかりでないこともお伝えしなければならん。
レディース・メンズ店と向かい合わせにある「レオナルド」。
ここは日本の名店100に選ばれた店。
色彩の鮮やかな大人のハイブランドを揃えたインポートセレクトショップ。
ここのショーウインドーは実にハイセンス過ぎる。それらを自然に着るには遊びの達人ではないと着こなせないスタイルである。
ようやく、天神橋筋6丁目駅前に到着すると、喫茶店「ファースト」のマスターが箒と塵取りを持ち素早い腰付きで駅付近を熱心に清掃をしている。
私はその姿を見て時刻を知る。
閉店の30分前のきっちり18時半から清掃をしているからである。
この店の周辺は本来、人の出入りが一番多く、ゴミの量がすごいはずなのだが、この店主のおかげで整った風情を保っていられるのだと私は思っている。
この日本一長い天神橋商店街。
大型店のモールには出せない味と個性が満載している。
毎日ここに買い物にやって来る客のための創意工夫は計り知れなく、どれだけ時代が変化しても変えられないスタイルもあるだろう。
商店街では先取りの商品よりも、暮らしに根付いた定番の品があふれ、そこでは思わぬ出会いもあり、なかなか油断出来ない商店街である。
メッセージTシャツは「本物の眠りがほしい」を選んだ。
調査業に長年携わると職業柄、睡眠不足の人が多い。
眠りはお金では買えない。
明け方、帰宅する調査員の姿を思い、絶えまない時間の中にいる同志として、要らぬと言われてもどうか受け取って頂きたい。