中野ブロードウェイ
2014年8月25日 カテゴリー:雑記
私はどこにいても商店街が好きで、中野サンモール商店街にいた。
何かに吸いこまれるように、オタクの聖地「中野ブロードウェイ」に入ったのは数年前。
その歴史、構造をWikipediaで確認すると中高層階はマンションであり、オタク文化の象徴になった経緯を知る。
サブカルはもちろん、面白いお店がたくさんありすぎて、なかなか味のある食堂、くせのある喫茶店が多くあって、とある人形専門店では居並ぶ年代物のドールの妖しさに魅了された。
ビレッジバンガードに置かれているコミックや本のセンスは好きなので、読む傾向然り、
気になるモノなど、オタク的な要素は充分あるかもしれない。
昔のおもちゃを眺める大人の顔は童心に返り子供のように無邪気だ。
見ているだけでトリップ出来て、これほど心を奪われるモノはないだろう。
私はここで、7才の頃持っていた、りかちゃんハウスを発見した。
赤い塩化ビニール製のトランク型で、開けるとお部屋が現れる。
もっとゴージャス部屋にしようと壁にお花のシールを張りまくり、本物のカーテンのようにレースを張り付け、これを買ってもらった日の感動は今も忘れていない。
毎日一人芝居をしながら楽しく過ごしていたが、強度のないハウスの上に誰かが尻もちをついて崩壊した時、私は何故か声が出せず、ただ涙がこぼれるだけだった。
子供の頃のおもちゃはいつの間にか消え去って行く。
それでも、中年高年となって、こうして突然現れると一気に7才の頃を思い出させてくれる。
全てが気に入っていたはずだった、たくさんのおもちゃの中から。
自分にとって一番のお気に入りを。
まんだらけでの万引き事件について悲しく思う。
気に入っていた小さな書店があった。
そこでは、その作家が好きならこの本も面白いかもと勧めてくれ、ベストセラー以外の作品を独自のセンスで置かれていた。
自動ドアも監視カメラなどなく、たったひとりで老女がやっていた。
そのせいか万引きは多く、希少の本が狙われ、嘆き、いつの間にか廃業していたのだった。
この店の思い切った行動に賛否が分かれるところのようだが、店側の対応を支持する声が多く、過ちの許されない時代へとなっている。
りかちゃんハウスは思いのほか簡素なものだった。
今の精巧な華美なおもちゃとはかけ離れていたが、当時は最高のおしゃれ感を醸し出し、子供の心をわしづかみにした。
りかちゃんハウスを売った人は私と同じ時代を生きた人だろう。
懐かしく手に取り、買う人もそうだろう。
大人になったことの特権は誰にも反対されず、それが自由に買えることだ。
それを知る誰かと一緒に笑い合えたら、どれほど楽しい時間を過ごせるのだろう。
高額な品も多いが過去のモノは当然であって、お金では買えない忘れ去った自分を思い出せる時間も詰まっているのだから。
眺めると心がざわついてしまい、何度もそっとトランクを開けたり閉めたりしていると店主は、これまでのりかちゃん人形の遍歴について熱く語りかけるのだった。
モノにはその時代のメモリーまでもが詰まっている。
こんな気持ちにさせてくれる商売は他にはないだろう。
次回、必ずや来訪するつもりだが、また何かを発見するのではないかと思い記憶の底を呼び覚ます時間を楽しみにしている。