けものたち
2014年6月25日 カテゴリー:雑記
深夜、地鳴りのような断末魔のような、おぞましい声が聞こえてきた。
その声は徐々に我が家に近づいてくる。
二階の窓を開け首を出しながら、耳を澄まし周辺を見まわすが姿は見えない。
我が愛猫達はリビングで寝ていたが、その雄たけびをキャッチして飛び起きた。
階段をダッシュで駆け上がり、向かうは私の部屋である。
私と2匹の猫は並んで首を出しながら、待っていると、その声の主が徐々に近づいて来るのは小さき獣達の姿である。
外灯が消え凝視すると、地上にいる固まりは、およそ7キロの白のデブ猫と、3キロほどの白黒の猫であった。
猫の喧嘩といえども、野生の世界に生きる者達のテリトリー争いは、どちらかが息絶える寸前まで行う。ネットの動画の可愛らしい猫同志の喧嘩などとは全く違う。
二階の窓から確認出来る限り、そのすさまじいまでの死闘は、およそ30分以上。その間、エクソシストのようなおぞましい悪魔のような声と飛び散る体毛。
近所のおじさんが余りの喧騒にパターを持って、仲裁に入いろうと試みた。
だが、途中で止めても、その決着をいずれ必ず行うものである、
場所を移動しながら、互いの顔をこれでもかと付け続け、にらみ合いを行う。そして、空中殺法を何度もしながら、急所である腹の肉を後ろ足で痛めつけるのだった。
窓から首を出しているのは我が母と私のみである。
我が家の猫達はその本物の雄たけびとクローズなる闘いを本能で感じ、恐れをなして身を震わせて押入れに避難したのだった。
どう見ても3キロが降参をするかと思われたが、ほぼ体毛を失っても最後まで闘い続けた。決着は互角、3キロは身を何度も崩し、のたうちまわりながら、暗闇の先にある裏庭に姿を隠した。
7キロも横たわり毛づくろいをしながら、小さく鳴きながら闇夜に消え去った。
その後、我が家に偵察にやって来るのは3キロである。
7キロは森の中で死んでいたことを後に知る。
小さなこの野生王国の世界で生きる獣達は、相手がどんなものであろうと、闘うことをやり続けないことには生きられない。
何処かで雄叫びを上げる声を聞く。
たとえ片目を失っても、それは自由で永遠に獣でいられる叫びである。
さきほどまで、のんびりとおやつのササミをたべていた我が家の獣達。
押し入れに逃げ込んだので、大丈夫と強く優しく抱きしめた。
どちらも、きっと。
幸福なのだと私は願う。