ライオン
2014年5月07日 カテゴリー:雑記
いつからだろう。
サウナに激しいよろこびを感じるようになったのは。
身体の毒素が抜けきり、どんな美容液よりも気持ちがいい。
若い頃はそこに一歩入れば息苦しく思い身体が受け付けず、全裸で所在なげにそこにいることにも、何かしらの抵抗もあったのかもしれない。
そこで私は恥ずかしげもなく、腰にタオル等を巻くこともない。
顔の皮膚の乾燥を防ぐための独自に作成した顔マスクのみ着用。
堂々たる肉のかたまりで熱さに耐え忍び、修行僧のように目を閉じじっとしている。
そして、ここに訪れる客人の会話を興味深く聞かせていただく。
概ね60才以上であろうか。
人生の酸いも甘いも噛みしめた皆、猛者、達人揃いである。
もうあの心を身体を震わせた恋愛も過ぎ去りし遠い過去。
家庭生活も何とか乗り越え、それでも終わらぬ主婦の時間をやりくりをしながら、生れたままの姿を見せ合い気高きライオンの像のようにそこに鎮座している。
ライオン達の話は尽きない。
誰かの噂話、夫のこと、今夜の夕飯のお手軽メニュー。
確かな老後に備えて独自の健康論を語り、玉のような汗をかき、水風呂と並行しながら1時間以上を過ごす。
どうやら政治家、麻生氏のスーツにはフォルムを美しくするために鉛が入っているらしい。私はそうなのかと目をつむりながら驚き、もっと情報を得たいが職業柄、暇ではなく15分ほどでそこを出る。
若い女性でサウナ好きが少ないのはストレスを発散する別の機会も多く、流れる汗も弾けるようで、さして重くないからだろうと察する。
女性がある時から、サウナをこよなく愛するようになった時。
その空間でライオンのように平気で過ごせることが出来るようになった時。
しばし、訪れることが出来なく身体がサウナを欲する時。
まぎれもなく、おっさん化へと突き進むことに間違いない。
このおっさんという無礼な表現をお許し下さい。
これまでの抱えていた大きな何かを産み落とし、振り切った成長でもあろうと思いたい。
生れたままの姿で話す言葉は気取りなく、かまえることもなく、時に素晴らしい情報もいただけて、私は名も知らぬ、この気高きライオン達と会えることをいつも楽しみにしている。