紙の月
2014年1月21日 カテゴリー:雑記
1981年に起こった三和銀行オンライン詐欺事件。
時はバブルに向かっていた時代で、真面目に思われていた独身の女性行員がオンラインで銀行の金の横領を行い、好きな人のためにやりましたと、逮捕されるまでマニラに潜伏し逃亡していた事件である。
この話を題材にした角田光代原作のNHKドラマ「紙の月」が始まった。
主演は原田知世。
めったにドラマなど執着して見ないが随所に引きこまれる何かがある。
このドラマは横領事件だけでなく、女が抱え持つ問題のドラマであって、重なり合うように3人の女性が登場する。
どれも一見、幸福に見える女達である。
バツイチの華やかなキャリアウーマン。
実は買い物依存症で不倫中、それも今や若い同僚に奪われそうになっている女。
或いは、安定した家庭を持ちながら、全てに異常なまでの倹約を家族に強いる妻は、何かを見失い、人生はお金が全てという女である。
そして主演の女はエリートの夫を持つが子供はおらず、妻を常に支配下に置き、心ない言葉と必要とされない日常から逃れるように友人のすすめでパートの行員として働きに出るようになる。
人はそれぞれ幸福であることの基準が違うのだと思える。ごく普通に生きてきたはずの女が、何かのきっかけと出会いで、簡単にも人生を狂わすことの恐ろしいまでのリアルストーリーである。
自分の存在価値が失われて孤独に打ちのめされている時に、あなたはそのままでいい、変わらなくてもいいと言われたら、心は知らぬ間に傾いてしまうものなのかもしれない。
紙の月とはペーパームーン。
作りモノ、まやかしを現わすと言う。
紙は紙幣を意味しているのだろうか。
原田知世もいつの間にこんな憂いを持った女性になったのかと思うほど、とても静謐な品のいい、危う気な闇を持つ女を演じている。
時折流れる音楽もいい。
現実から流浪の旅へと向かうように 。
映画「バクダッドカフェ」の叫びのようなメロディが流れる。
このドラマは登場する家族の関係も主人公と大きく関わっている。銀行の顧客である独居老人達は皆、曲者で、孤独で他者に愛を求めながらも、そばにいる家族を愛せない、信じない人達である。
光と影があって人生は彩られていくもので、闇は誰の心の中にもある。
その闇が消えないことはどうしてだろうと思う。
私の中では何か心騒ぐドラマが始まった。