スイッチを切る時
2013年12月13日 カテゴリー:雑記
私は電動自転車を愛用している。
立ち漕ぎで超えられていた坂が、ある時から限界となった。
今はどんな坂も電動でブイーンと非常に楽チンである。
だが、そのブイーンの横をママちゃりで立ち漕ぎで走り抜ける女性に出くわす。その鍛え抜かれたふくらはぎは程良い筋肉で体型はアスリートではないが、前後に子供用の椅子があるので、保育園に送り出した後なのか、いつもスーツを着用し、働くお母さんだろう。
今日は現れないと油断しておれば、坂の場面になると猛スピードで私を追い抜けて駅へと向かう。台風前後の大雨の日も完全防備のカッパを着用し走り去るのである。
逞しく、美しく見える働く母の姿に感動して、電動自転車などで甘える自分を戒め、電動のスイッチを切りパワー全開で私は立ち漕ぎレースに挑む。
この朝のレース参加者は総勢数名。
皆、ママちゃり子供用後ろかご付き愛用者である。
若きお父さんや中高年のおじさんは明らかに息が上がっているが、家のローンがまだ残っているので踏ん張りながら坂を超える。
坂の傾斜は激しく、とてつもなく長い。
フラットな道からいきなりの上り坂は学生でもハードでリタイアするものが多い。だが、この朝のレースは1日の始まりであり、私は毎回挑んでいるが一度も勝てない。
坂の途中、知り合いのおじさんが家の前から手を振ってくるので、よくぞわかりましたね。
と大きく手を振って、その家の随分手前で脇道に入る。
世間では嫌なニュースばかりだが、市井の人々はこうして働きに出るだけでも困難な道のりから始まり、子を育て、仕事に向かい生きているのだ。
この坂を毎日、雨の日も風の日も自力で超えることが出来る人は、皆、勝利者であろう。私はいつも、彼女から皆さんから働くことの意味や、溢れ出るパワーをもらっています。
そして律儀に毎日手を振るおじさんに、一度立ち話でもしようと近づくと、おじさんはある政党のポスターだったことに愕然とする。
おじさんに思い切ってポスターの話をしたら、何故か大ウケする。
時々本人自らも手を振ってくれるようになって、私は愛すべき我が町のたくさんの方達から元気を頂いております。