探偵はバーにいる2
2013年6月24日 カテゴリー:雑記
どうやら世間では探偵はバーにいるらしい。
ハードボイルドに生きる男の世界。
そこはジャズが流れ、静かなムーディーな光と影の織りなす怪しい照明
カウンターで飲んだくれている姿はきっと絵になるだろう。
だが、ふと思う。
さっきまで追いかけていた対象者。
飲むのはいいが、いつその報告書を作成するのだと。
何故なら、探偵の仕事は現場の尾行が終了すれば仕事が終了するのではない。実は終了してからも本番の仕事で、一番手間がかかり、先ほどまで終日、尾行していた対象人物の動きを完璧に描写するには、机上で再度、脳をフル回転させなければならない。
何故か、探偵を描くドラマ、映画の中では探偵社として、この一番重要である「報告書作成」のシーンを一度も見たことがない。
張り込みのシーンでも、楽しげに車中で食事をしているが通常、生理現象を抑えるため、調査前に計算して食事を取り、調査中は緊張と忙しさで、のんきに食事を取るなどしない。
睡眠、食生活、時間の全てが不規則な時間の中にいるため、圧倒的に痩せ型の人ばかりである。
本物の探偵業の苦悩を知る私からすると、現実との余りにもギャップに戸惑うが、一度でいいからドラマのようなカッコいい探偵が集うバーに行ってみたい。
だが願いは叶うものでもある。
バーをされている方と仲良くなったので、行かせていただいた。
さあ~いざ行かん。
探偵はバーにいる。
そこで調査員N氏はグラスを傾ける。
A氏は仕事のためウーロン茶。
K嬢はその場所に驚きながら和んでもいる。
私は小腹が空いたのでパスタを平らげる。
N氏はそこへやって来るのに、ママちゃりで来られた。
ダーツもやってみたいが、何かが違う。
平均年齢45歳、私だけだろうか。
椅子の安定感のなさが腰にくる。
N氏はバーの居心地の良さを感じ一人残られて、静かに飲んでいたという。
バーを出て、ママちゃりに乗って帰る姿、人が寝る時間に仕事に向かうA氏の姿こそ、真っ当な本物の探偵の姿であろうと思う。
探偵はバーにいる。
バーにはいるが完璧に仕事を終えてから。
或いはいつ仕事が入ってもいいように、スタンバイの状態でいることが重要なのである。