身上 彼氏の行方
2013年5月15日 カテゴリー:調査記
彼から連絡が取れなくなって半年になります。
会社も自宅も知ってはいますが、あえて連絡することはしたくないのです。
いつもお互い無理のない都合の付け方で会って、絶えず追いかけるような事はしたくありませんでした。でも本当はもっと会いたい、ふとした時間、今頃どうしているのかなとメールの文章を書きかけては、連絡が来るのをもう少しだけ待とうと自分からの誘いのメールは一度も送らなかったという。
普通の恋愛をしている方からすると理解出来ない関係のように思われるかもしれませんが、調査会社には様々な深い事情を持った方のご相談があります。
そして、この恋愛はどこにも、誰にも相談出来ないことだとわかっています。
彼はここ1年、ある病を発症し入退院を繰り返していたという。
妻子のある人なので見舞いに行くことも出来ず、突っ込んだことも聞くことも出来ない。
以前も、しばらく連絡の取れなかった時に彼の風貌が随分変わり、聞くと入院していたと言う。
その病名は命も失うほどの病なのに、彼は大丈夫だからと心配しないでほしいと。
努めて明るく振舞うのです。
こんな時こそ、私は傍にいて、何か力になりたいのに、今の自分はどうすることも出来ない立ち場であると思い知り、もうこんな関係は続けたくないと初めて一人で泣きました。
表現出来ない苦しみと淋しさは石のような痛みを持って絶えず心の片隅にあったという。そして、また連絡が途絶え、3ヶ月ほど待った彼の携帯電話に思い切ってかけると契約が解除されている。
彼からは別れ話が切り出せず、自分は捨てられたのだと、これでよかったのじゃないのかと思うようにもしました。でも、何か打ちのめされた気持ちになり、何故もっと彼と本音で喧嘩しておかなかったのか、自分の大人ぶった振る舞いは彼に誤解すら与えていたのではないかと。
あの最後に会った時。
彼から私には弱みを見せるなどありえない状況だったと気がついたのです。
今の彼の状況がただ知りたいという。
何か胸騒ぎのようなものがしてならない、何かを思い関係を終わりにしたのならば彼が元気でいることで自分の中で受け止めなければならない。
調査の結果はそうではないことを願っていましたが、急死されていることが判明する。
願われるならば菩提寺を探す方法もありますが、最後の時を知り、残された家族を思い、前に進むことを一番に思う。約束通り、この結果を受け止め、彼と行くはずだったお店で私と過ごしました。
お盆が過ぎる頃、私は彼女を思い出す。
もう15年前になるだろうか。川沿いのレストランの窓から見える、突然の土砂降りの雨。傘のない私達は、いつになったら止むんだろうねと言ったら、この雨は私の涙です。
でも帰る頃にはきっと止みますよと。
激しい雨も帰る頃には止み、何度も何度も私は振り返り彼女を見送った。
この苦しい結末の恋愛を乗り越えてくれたならば、この経験は必ず糧となって、きっといい恋愛をしているだろうと私はそう信じている。