おもちゃ達のお引越し
2012年12月25日 カテゴリー:雑記
今、誰かが事務所のドアを開けたらきっと驚かれるだろうう。
愉しい気分になるに違いない、誰か来訪者が来ないかなと思う。
4人掛けの面談用のテーブルの一面には溢れるほどに数100個の直径5㎝ほどの小さな色とりどりの可愛いフィギア達が所狭しに並んでいますから。
出勤してきたK嬢が、大きな袋から取り出しながら、笑顔で全てをテーブルに並べてくれて、一つ一つ、フィギア達の説明をしてくれました。
それは20年以上前にK嬢がまだ幼かった子供達のために買ってあげたおもちゃのフィギア達で、何かを購入した時についてくる今も人気のおまけの商品ですが、当時は購入しなくても100円足らずで購入することが出来たという。
現在も販売されているのですが20年前のモノは凝った作品が非常に多く、ネット上ではレアな形もあるらしく一部は高値でオークションされて、海洋堂のようなリアルなモノも多くあります。
小さな子供を育てながら母親がフルタイムで働くことは、どれだけ努力を重ねても多くの犠牲を払いながら働いています。当時、子供達は毎週、そのオモチャをママが持って帰って来るのをちゃんと知っていて、ドアの開く音を聞きつけると玄関で満面の笑顔で並んで待っていたそうです。
休憩時間になると、そのお店に足早に向かいます。
子供達の笑顔を思いだしながら。
喧嘩をしないように同じものを2個選びます。
フィギアのお土産を、そのお店で選んでいたその時間は、K嬢が必死で働いていた日々でもあり、一番充実して輝いていた母としての日々に違いありません。
どれだけ疲れていたとしても、子供達のその笑顔を見て癒されるために購入し続け、本当は片時も離れることなどしたくなかったはずです。
K孃本当にお疲れ様でした。
この居並ぶフィギア達は単なるおまけのおもちゃではなくて、K嬢家の子育ての証。
私には、まるでそれがトロフィー達のようにも輝いて見えます。
その圧巻たる物量に思わず事務所の調査員方と童心に返り、一つ一つをじっくり眺め遊び方を知り、私はバービーのようなお人形さんの髪の毛が爆発していたのでローションを使い綺麗に丁寧にブラシで梳いてあげました。
きっと、この小さなフィギアで遊んでくれる期間はたった数年間だけだったでしょう。
K嬢が、それらを眺めている時の表情や手に取る仕草は、その時代の子育てを思い出されていたのか、懐かしく話される姿は完全に優しいママの顔になっていました。
私には子供達が玄関でおもちゃを待っている笑顔や、ようやくママが帰ってきたことの嬉しさに溢れる、満面の笑顔。その子供達の可愛らしい姿が思い浮かんでくるのでした。
子供達は成長して、知らぬ間に長い間、クローゼットの奥のおもちゃ箱の中で長い眠りについていましたが、この大量のフィギア達は処分されることなく、新しいお友達のところへと引越しをすることになりました。
毎年恒例である年末の家族参加の忘年会。
調査員方の子供達にゲームの中で差し上げることになっています。
そういえば、子供の頃に、あれだけ夢中になって遊んでいたおもちゃも、ある時を境に急に興味を失い、いつの間にか消えてなくなっていますね。
大人になっても泣いてしまいそうになる「トイストーリー3」
あの感動のラストシーンの映画のように、おもちゃ達は息を吹き返し、この不思議な縁を引き継いで、きっと新しい仲間との出会いに悦んでいるに違いないと思っています。