人生の寄り道
2012年12月13日 カテゴリー:雑記
色、味、香り。その性格は千差万別のワイン。
至福の喜びを与えたり、時にはがっかりさせられたり、好みの彼女と出会えるかどうかは恋人探しと同じくらい難しい。
映画「sidewayz」2004年 アメリカ作。
この映画は小説家志望で離婚のショックから立ち直れない男マイルスと結婚を目前に控え、落ち目になりつつある俳優でプレイボーイの男ジャック。二人でカリフォルニアのワイナリーを旅するロードムービーのお話です。
何事も楽しけりゃいいという女と遊ぶことが大好きな楽天的なジャックと、離婚の痛手から全てのことにマイナスに考えるワインオタクのネクラなマイルス。
ワイナリーでも安物のワインしか知らないジャックにそのうんちくを熱く語り、小説家への不安ばかり考えているマイルス。まだまだ遊び足りず、行く先々で女をナンパし、ワインなんか本当はどうでもいいジャック。
しかし、そろそろ遊び続けること、年貢をおさめなければならない者と、その結婚を終えたばかりの者。
小説家への前祝いと結婚の祝いを兼ねた中年の男二人のワイナリー巡り。案の定、道中はジャックの女好きのトラブルに巻き込まれ、マイルスはこの旅で更に落ち込み、男としての自信さえも失っていく。
ジャックは知り会った人妻の自宅へ誘われるまま行ってしまい、夫が帰宅、命からがら脱出するが、そこに財布を忘れてしまう。その中には婚約指輪があり、先ほどまでの能天気さは消えうせ、しでかしたことの重さに、情けなさにホテルのベットで号泣する。
実は仕事や、その結婚でさえも不安に襲われ、一体どうして、これから普通の結婚生活をやっていけるのかと。一番悩んでいたアホのジャックのために、再度、野獣のような夫とそれ以上に実は猛獣だった女の待つ家に、又もや命の危険を覚えつつ、指輪奪還に一人で向かわされるマイルス。無論ワインを堪能する時間すらなく忙しいが優しい男である。
女性から見ると、この二人は全く同じ種類のダメ男なのである。
寡黙で一見、大きく強いようにみせるも実は、か弱い男。
女を全て知ったつもりで実は何も得ていない男。
両者、真剣に悩んでいてもうまく現すことが出来ない。
誰も聞かない うんちくを一人語り続け、片や自分は女を喜ばせていると勘違いしているのである。
そんな中、ワイン好きな魅力的な大人の女性マヤと出会うマイルス。初めて彼の人生とワインのうんちく、小説の話をじっくり耳を傾けてくれる女性だった。
「ピークを迎えるその日まで味は複雑に変わっていくわ・・・ピークを境にワインはゆっくり坂を降りはじめる・・・・でも、そんな味わいも捨てがたいわ・・・」と。
離婚経験者でもあるマヤは全てに落ち込む彼を察し、ワインの熟成を人生になぞらえ、その枯れ始める時も実は、人生で一番充実している時でもあると。
そう包み込むように優しく手を添えてくれても、踏み出せないマイルス。
旅は終わり、それぞれが自分の置かれている場所へ戻り、自宅の留守電にその小説の批評と、あなたの才能を信じているというメッセージを知り、ようやくマイルスも自分の気持ちを伝えなければならないと、車を再び走らせます。ブリッジを走る車、ラストカットの暗転、ノックの音だけで終わります。
サイドウェイとは、人生の寄り道とでもいうのでしょうか?
人生は時に行き詰まり、そこに長らく停滞してしまうこと、あのカリフォルニアの大地に行けばきっと何かが変わるだろうと。
深く悩むことは実は次への大きなステップが始まっていて、絶対に答えが出ることを気づかされます。しかし、その全てがユニーク過ぎて、ギャグとしか思えない旅なのですが、何か憎めない、優しく抱きしめてあげたくなってしまう、愛すべき男達です。
全編カリフォルニアのサンタバーバラの美しい牧歌的な風景。
ワインを愛する人達のその造詣の深さ。そして流れるジャズ。
そして、思い出す。
あれは、いつだっただろうか、深く飲みすぎてしまった、あのワインの夕べを。
未だA氏にそれを言われ続ける日々であるが、永遠に語り続けるつもりだろうか。
本当にそこはムーディーなジャズな調べが流れる実に素敵なおしゃれなお店だったらしいが、全く覚えていないのが非常に残念である。
どうか、もうそろそろ、忘れていただけないだろうかと・・・・。