東京散歩
2012年12月05日 カテゴリー:雑記
友人が東京に住んでいるので時折、訪れる東京。
早朝、マンションを出て、友人に所用のある錦糸町駅まで送ってもらう。
所用が済むと、夕方までには友人宅に帰り着けばいいだろうと散歩ワールドの始まりである。
天候がよく、気分がアップしていくと両国橋を超え、浅草の街が見える。
浅草は観光地であるが、賑やかしい通りから脇道に入ると静かで、レトロ喫茶店が点在し、昼間から屋台のような飲み屋があちこちにある。
人形町までの道のりはあっという間で、ここで
「喫茶去・快生軒」
という大正時代からやっている喫茶店でマーマレードトーストとコーヒーを頂く。
かつて向田邦子が好んでいた品と席に座り、目を閉じ、しばし空想の時間に浸る。
その店のドアを出て、では銀座まで向かってみようかと。
都内は少し歩けば地下鉄・私鉄・都バスも網羅されているが、通過しているだけではわからない、その街の匂いが全て違う。
あれはいつだったか、西日暮里駅付近、国道沿いを歩いていると古びたガラスのショーケースにぎっしりと多くの種類のサンドイッチが並んでいた。
子供の頃、よく見かけた佇まいのお店で、赤い看板には「サンドイッチ ポポーの店」とあった。
エプロンを着けた恰幅のいいおじさんは、カウンターで注文する学生に笑顔で
「おっかさんの風邪は治ったかい?」 と。
学生の男の子は子供の頃から食べているのだろう。
それは玉子が、はみ出さんばかりのサンドイッチ。立ち止まり、同じものを注文し、店前にあるバス停のベンチで食べながら、その客とのやり取りをずっと眺めていたいほど、コンビニとは違う触れ合い、味わい、懐かしいタイムスリップするようなお店だった。
何の準備もしていない時に、突然現れる素敵な町並みや、その小さな出会いは「東京散策」のガイド本を読んでも載ってはいない。
ある日、坂を降りたり登ったりしている内に、珍しく迷い込み、ここはどこですか?と道行く人に尋ねてみると、一体どこから歩いてきたんだいと。その距離を知られると大きく驚かれる。
ただ、もう少し先には根津、谷中銀座という小さな商店街があって、そこから眺める夕焼けはキレイだよ、きっとあなたなら気に入るだろうと。
老夫婦は浅草に毎月お参りし、都バスに乗ってあちこちお出かけされているようで、見るからに関西人の私へのお薦め観光情報の話は止まらない。
言われた通り、夕暮れ前までにたどり着くと、そこは「ALWAYS3丁目の夕日」のような所で、その階段の傾斜が絶妙な角度らしく「夕焼けだんだん」というスポットだと初めて知った。
ようやく銀座にたどり着き、かつて私の30年前の仕事の取引先だったお店が今もあり、そのラインナップは今も尚、国産のこだわった品揃えである。
世界中のハイブランドが集結する銀座の店主の誇りは他と比べようもなく、その輝きに触れながら、終点の8丁目から新橋へ移動する。
ここまで来たならば、東京タワー付近も歩いてみようかと思うが、姿はそこに見えても本体に触れるには歩けども歩けども非常に距離があることに驚く。
しかし、道中たくさんの東京人に励まされ、親切な方に助けられたからには、タワーの足元にいるあの犬達に会うためにも頑張ってみる。
夕刻を過ぎ、品川駅に到着し、マンションへ帰ったが、友人は東京に住んで10年近くなるが、ポポーについても熱く語ったが、私の出かけた先の場所を知らなかった。
関西に住む私が都内激安スーパーを知り、最新お得情報もお伝えしているのだが、友人はただ、ただ、その散歩の一日の半分の話を聞くだけで、
「何故、そこまでして歩くのか?」
とそればかり聞くのである。
東京は大好きな街で、人も暖かく、行き止まりのような道の先に洋館が姿を見せて、どこまでも私を歩かせてくれると答えている。
ちなみに翌日も、高円寺駅まで車で送っていただけたら、荻窪、中野、新宿、渋谷ルートで帰宅すると伝えると、大きくのけぞり、何度も何度もしつこいくらいに、グーグルマップを眺め何故か驚愕しているのであった。