ウリ坊一家
2012年11月13日 カテゴリー:雑記
小さな裏庭であるが夏の雑草の手入れは大変で、あっという間に雑草が生い茂り、2ヶ月もほっておくとすぐにジャングルになる。猛暑が続き、雨が降り根が柔らかくなる時にと、涼しくなるの待っていた。
早朝、裏庭を見るとそのジャングルだった雑草は全て掘り起こされ、平地ではないため足台に置いていた大きなブロックも全てなぎ倒されている。
その硬い地中を何10センチも掘った跡は激しい渦巻き状になっており、人間の手で刈り取るにも屈強な頑丈な草の根もほとんど姿が見当たらない。
犯人は毎年やって来るイノシシファミリー2匹である。
深夜2時頃、裏庭をのし歩く不審な足音が聞こえ、小窓から覗くとイノシシ親子が暴れまわっていたという。
肉眼で見るに親は巨体であり、子は6キロ前後に見え、親は鼻を大きく突き上げながら、時折雄たけびを上げ、ブヒブヒと言いながら地面をけちらし、その根っこを貪り、子は親からの根っこを与えられ1時間ほどで、この庭の草木、草の根を食い尽くしていた言う。
数年前からやってくる、このファミリーを阻止するべく、役場に相談し設置したセメントの高い柵は裏庭に覆ってあるのだが、あまり意味がないらしい。
私の自宅は整列された住宅街のはずれであり、山を切り崩したその新しい住宅街はスウェーデン住宅風で庭よりも駐車場がメインで土や草木はほとんどない。
深夜、人の気配が消える闇に紛れて、腹をすかし山から下りた決死の覚悟の親子は住宅街に身を隠しながら必死で疾走している。
しかし、立ち寄るどの家にも土はなく、タイル張りの家々ばかりで、鼻先は草の根を求めて彷徨い続けるが、食物の匂いのする畑や農家があるのは車道をはるか越えた先にある。
そこへ向かうには深夜でも車の往来があり、明るい電灯に囲まれ、子を連れたイノシシは向かうことの困難さを知っているはずである。
敏感な嗅覚は食料を追い求めるだけではなく、絶対に姿を見られてはならないと、あの鈍感そうにも見える巨体だが忍者のように動いているのだろう。
近所にはもっと立派な庭や家庭菜園をされているお宅もあるが、そこはまだ被害が少なく、この我が家の貧相な庭の土と雑草を好む。
そして、置かれた大きなブロック数個、ガラクタのコンテナボックスを蹴散らし、地面を穴だらけににして怒り狂うがの如くである。
かつてこの一帯は延々と竹やぶの道が続き、竹の子の里でもあったこの大地は、それがイノシシの大好物だったと知る。その里山に人間が勝手に住み、生態系を壊してしまい、生類みなきょうだいと思いたいが、農作物への甚大なる被害、人への被害を思うと一体どうしたらいいのかと思う。
被害があった以上、役場に報告をして、担当の方もチェックに来るという。絵本の中ではウリ坊と可愛い姿に思われますが、70キロの石さえも簡単に破壊する力のあるこのイノシシに子供達や人間が襲われないようにするために。
だが、どれだけ自宅の裏庭が荒らされても、そこに子供が寄り添っていたと聞くと、ただ生きるために闇を必死に疾走する親子の姿が浮かんでしまう。
深夜、自宅の飼い猫達が突如2階の窓からじっと闇を眺めている姿を見ると、その気配を察知したのかと出窓でしばし待つが私は一度も見たことがない。
そして、あれこれ思うだけで何も解決策は見えない。