運命の女
2012年6月27日 カテゴリー:雑記
その時、風が吹かなければこんなことになっていなかったかもしれない。
そんな意味深なタイトルがついた映画。
「運命の女」原題はUnfaithful 2002年作
1960年代のフランス映画「不貞の女」をリメイクした映画。
妻を演じるのはダイアン・レイン 夫はリチャード・ギア。
この世の中には数多くの不倫がテーマの映画がありますが、私の中では何か一番心に突き刺さる映画です。
突風が吹く街中、家路を急いでいた妻。その風が偶然に男性と巡り合わせる。
雨宿り、しばしの語らい、退屈な日常、お互いの感性がふっと交差する時。
人は男女の関係になってしまうのでしょうか。
若い男性との刺激的な日々、忘れていた感情が身体中がめぐります。
そのロフトに住む男性の自由な感性、自分をただ愛してくれること。
それから妻は何かに憑かれたかのように、その若い男性の元へ頻繁に訪ねるように。
いつしかそんなホットな時間も過ぎ去ります。
妻は夫に嘘をつくこと、子供のこと。
もう耐え切れない気持ちに変化していきます。
夫は優しく、生活も安定しているのにどうして彼と過ごしているのか。
もうこんなことはしてはいけない。
全てを失ってしまう。
夫にばれる前に終わりにしようと意を決して別れの言葉を電話で告げます。
すでに夫は妻の行動に不信を持ち、探偵を雇い証拠を掴みます。
その全てを確認します。
妻の気持ちを止められないだろうと、思い切って男性のロフトへ訪ねると
男性は悪びれず、不貞を認めるその態度。
寝室の乱れたシーツを見ても、何とか気持ちを落ち着けようと。
しかし、ベットの脇に自分が、かつて妻にプレゼントしたスノーボールが
置いてあることに気がついてしまう。
ただ話をするだけだったのが、そのスノーボールは夫にとって意味のあるモノ。
気持ちが抑えきれず、勢いあまって男性を殺してしまうのでした。
自分がしたことに震えていると、留守電が入り、聞くと妻の涙声が。
「もうこれ以上、あなたとは会えない、やっぱり夫を愛しているから・・・・
これ以上耐えられない・・・裏切ることは出来ない・・・お別れしましょう・・」
妻は、自分なりに結末をつけ、未だ心は不安定にもなりながら、何とか夫との暮らしをやっていこうと気持ちを奮い立たせます。
しかし、ふと目をやるとそこには、彼にジョークであげたはずのあのスノーボールが部屋に置いてあるのに気がつきます。
何故ここにあるのかと、それをよく触ると台座が動くことに初めて気がつきます。
それを空けてみると、そこにはメッセージカードが入っていました。
結婚25周年まで読まないでほしい。
生まれたばかりの子供の写真と妻への変わらぬ愛を誓ったラブレターでした。
寡黙で愛情を伝えきることが不器用な夫として描かれています。
始まりの小さなシーンで、妻が夫にセーターをプレゼントをした時。
夫が笑顔でいながらも気に入っていない表情を見せました。
さすがエイドリアン・ライン監督。
気づかないくらい小さな違和感を見せる描写が随所にあるのです。
この映画は当時、官能的なシーンばかりが話題になっていました。
実は細かい夫婦の機微や小さなズレから、少しづつ壊れて行くことの怖さ。
妻は愛されていないと思っていたのが、実は夫のことを何もわかっておらず、ずっと守られて、深く愛されていたのだと知ります。
心からの後悔の涙を流しながら、そのメッセージを胸に抱きしめながら。
あくまで映画の世界。
風が吹かなくとも、ある日突然、人生を変えることは日常にはあります。
日常が平凡であること、普通に暮らしていることはどれだけ素晴らしいことなのか。
そう教えてくれる映画です。