遠距離恋愛
2012年6月11日 カテゴリー:調査記
遠距離恋愛5年目。
彼が転勤になって、何度か二人の仲の危機はありました。
でも、なんとか時間のやりくりをして彼に会いに行くこと。
以前の関係とは違って新鮮で、この関係もけして悪くはない、そう思っていました。
でも、その距離感は時として二人の間を埋めようもないものになっていくことも。
ちょっと一緒にあの気になるお店に、映画に、と思っても彼は隣にはいません。
今テレビを見て笑ってることも、急に寂しくなることも。
顔を見て気持ちを伝えることが出来ないもどかしさ。
いくら電話してもメールしても本当の気持ちは伝えきれません。
一緒にいること。
その空気や風を感じることは大切かもしれません。
時々、電話が繋がらないこと、メールの返信が遅いこと。
久しぶりに声が聞けたと思ったら、疲れた声の様子。
これ以上話をすることはいけないのだと思わされます。
先月、思い切って彼のマンションに行った時、何かいつもと違う感じがしました。
大好きなカレーを作ってあげようとお鍋を見た時、ほんのわずかにこびりついた煮物の跡。
そのお鍋はホーローなので薄っすらと色が付いていました。
以前来た時には、入念に洗ったというそのお鍋。
そのフランス製のお鍋は手入れが大変でも気に入って、結婚を意識して買ったものです。
女性が気に留める浮気の証拠は実に細かいところが多いです。
調査をした結果、納得することも多く、探偵もその感の鋭さ、推理力には驚きます。
それだけ女性は男性について細部にわたって知らぬ間に観察しているようです。
この恋は終わったと断言出来たらどれだけ楽になれるでしょう。
それが出来ないから、苦しい状況から現実を確認することを決意されます。
涙の壷が心の中にあるとするならばそれが満杯になった時なのかもしれません。
あれほど仕事が忙しいと言った彼の日曜日。
それは彼女の思い描く過ごし方ではありませんでした。
遠く離れた彼女はその細部にわたるシーンの写真や彼の表情や仕草。
手を繋ぐにも関係性を知る様々な形があってそれら全てを写真で確認しました。
そして、確認出来るだけの二人の会話もありのまま伝えました。
真実を知る者には、それを受け止めるだけの強さも持っています。
ドラマのように半狂乱になる、相手女性を追い詰めていくなどもありません。
相談時の時にはどれだけエキサイトしても報告時には落ち着かれています。
間に入る相談員が壷から流れ出る涙を受け止める役目もいたしますが、
やはり真実を知ることは気持ちが徐々に開放されていくのだと思います。
人間の愛情は複雑に絡み合った糸のようなものかもしれません。
1本ずつ丁寧に丹念にほぐして、きちんと揃える。
それは長い時間がかかり、何度も何度もあきらめてしまいそうになります。
不思議ですね。
もう駄目だと思っていたのに。
その1本の糸から、また新しい何かを作り出しても行けます。
浮気を知っても、その内容や事情から全ての方が別れるわけではありません。
むしろ多くの方が別れることを選びません。
人間の持つ愛情や男女の仲は簡単に切り離すことが出来ないこともあります。
あのお鍋は今も毎日活躍しているようです。
彼女はその後、その彼と結婚し子供もいます。
その流れはきっと簡単ではなかったはずですが、それでも愛しているということ。
依頼人から、私はいつも言葉には簡単に出来ない何かを教えてもらっています。