煎餅ジャンパー N氏
2012年4月23日 カテゴリー:雑記
調査員N氏のデスクの椅子。
静かに書を読まれている姿の背後に大きく盛り上がった衣類を眺めること半年。
いつ、その椅子がひっくり返らないかとずっと心配しておりました。
椅子の背もたれには5枚の冬物ジャンパーが掛けられている。
アーミーグリーンの厚手のダウンジャンパーが一番上にあったので、
他の4枚は潰された形で煎餅のようになっていました。
春の気配を感じてきました。
椅子のジャンパー達をロッカーに入れたらどうでしょうか?
と、おせっかい焼きの私は提案したところ。
ジャンパーがそこにあったことすら、全く気が付かなかった読書中のN氏。
椅子から一枚ずつはがされ・・・。
「こんなところにあったのか・・このジャンパーが・・・」と。
久しぶりに再会するジャンパー軍団。
その中でも、一番かっこいい、まだ充分着こなせるアーミーグリーンのジャンパー。
もう随分使用し、汚れているからと処分するといいます。
いや、これはまだ捨てなくてもよろしい。
それよりこの昭和の匂いのするジャンパー。
こちらを捨てましょうと。
探偵にとって身を隠し、張り込み場所や時間帯によっては極寒をしのぐ
ジャンパーやコートの類は非常に重要です。
おしゃれすぎてもいけない、重くてもいけない、ポケットがあって、
目立たないものでないといけません。
無論、動きやすく、しっくりくるものでないといけないようです。
アーミーグリーンのジャンパーを処分する時。
私はこれを着て調査の現場に向かっていくN氏の姿を思い出しました。
昨年の冬の深夜の寒さは尋常ではありませんでした。
相談員は深夜は自宅で待機し暖房の効いた部屋で調査の現場連絡を待つだけです。
少し窓を開けただけで寒風はすさまじいものでした。
時には単車に乗り、自転車に乗り、車内に居てもエンジンは掛けられない場所で張り込んでいる。
N氏がジャンパーを着ているシーンが目に浮かびます。
そのジャンパーはただのジャンパーではありません。
多くの依頼人を救っていただきました。
感謝の念と共に、私はこれはクリーニングに出して残し来期も使用して残り4枚を捨ててもいいのに、としつこく思います。
しかし、モノには別れがあるようです。
惜しみながらアーミージャンパーは処分。
残された捨ててもいい昭和チックなジャケット・ジャンパー4枚は何か大事そうにロッカーに保管されました。
その後、コートを購入されたようです。
拝見しますと、色使いといい、形といい、何か懐かしい匂いのするコート。
平成の大ヒットドラマでもある「東京ラブストーリー」の男優が着用していた。
あの時代の肩パットが入った半コートでした。
これは一体どこで買ったのか!
リサイクル品か?形が古すぎる!
何かで売れ残った商品ではあるまいか!
いくらで買ったのか!
実に失礼なことを質問攻めにしてしまう私です。
N氏はもちろん新品です!
街で購入しました!
これは古い形ではないはずです!
と大きく鼻をふくらませ抵抗していました。
ロッカーに放り込まれた煎餅ジャンパー達が気になります。
来期も気持ちよく過ごせるようにと、クリーニングに出して差し上げたい。
入らぬお世話と知りながら、そう思う今日この頃です。