家出 妻
2011年12月06日 カテゴリー:調査記
依頼者 70代夫 対象人 60代妻 結婚して40年近くなります。 妻がよもやこの年齢で家出をするなどとは考えられません。 大きな喧嘩をしたわけでもなく、商売をしていたので忙しかったですが、 普通の夫婦だったと思います。 テーブルには、夕食の準備のオカズがラップに包まれて、ご飯も炊かれていました。 置き手紙があり、 「しばらく家をでます 落ち着いたら連絡します」 とだけ書かれていました。 ただ気になることは最近、知人と称するグループと出かけることが多かったような 気がします。金銭関係は商売をしていたこともあって全部妻に任せていたので、 預金をチェックしたら多額の現金が引き出されていたのです。 妻は何かの金銭トラブルに巻き込まれたのではないか とやってきた依頼者でした。 家出のケースは基本的に自宅に伺い、対象人のお部屋を見せていただきます。 整然とされた部屋、何か荒らされたような部屋、それぞれ違います。 残された品々や愛用していたもので対象人の趣味嗜好、性格まで分析します。 立ち会いのもと、タンスや押し入れを開けて、再確認すると洋服やバック、 母の形見の着物、下着の多くがありません。家財道具は残されているものの、 化粧品など女性ならではの愛用の品々がありません。 残された家計簿には1円単位でやりくりしている、つましい姿が浮かびあがります。 並みはずれた高価なものも買わず、台所の様子をみても40年の月日で作り上げた であろう生活の基盤はきっちりされた方です。依頼者の夫はどうしてもっと早くに 妻の苦悩に気がつかなかったのだろうと悔やむばかりです。 長年の商売を、ようやくたたむことになり、これから夫婦の時間が始まると思って いた矢先でした。私が友人と1泊2日で出かけた釣りの日を選んで家を出ていました。 妻は最近、夜眠れないと言っていましたが、てっきり年齢からくるものだと思い、 深く考えていませんでした。 冷凍室に残された妻の手作りのおかずのタッパーを見て涙が止まらなくなります。 自分だけが儲けることなど考える女ではありません。 きっと、誰かに騙されてしまって苦しんでいるんです。 持病があり、薬が切れると命にかかわるかもしれませんから、 一刻も早く見つけて下さい。 どんなことがあっても妻を受け入れる覚悟は出来ていますから。 調査の結果、妻は自宅から遠く離れたアパートで身を隠すように住んでいました。 割り出したアパートに本人の確認に向かうと、妻はほとんど外出せず、 帽子を目深に被り、アパートの前に迎えに来る知人の車の後部座席に一瞬の隙に 乗り込むので、中々顔が確認できない警戒して生活していたのでした。 この怪しげな知人は妻をマインドコントロールし、商売を通じて人脈が多いのを 利用して、他の人も巻き込むつもりで動いていたのでしょう。 夫は約束してくれました。 責めないこと。 これからも共に生きるつもりで依頼されたのですから、落ち着いてこれからを 話し合って下さいと。妻はその小さなアパートでも出費したものを克明にメモを つけていました。長年の主婦の感覚は失っていませんでした。 老後のお金を少しでも増やせるかと思った投資話は思わぬ展開になってしまい、 夫に申し訳なく、妻は追い詰められてしまい正常な判断が出来なくなったようです。 その日のうちに妻を自宅に連れ戻したようです。 私共の調査で妻は知人の正体を知り、夫の苦しみや愛情も深く知り、完全に正気を 取り戻してくれました。 今は法的にこの詐欺事件を弁護士に相談をしています。 そして、ようやく穏やかな夫婦の時間を取り戻しています。