悩める依頼人の別問題について
2018年4月10日 カテゴリー:雑記
調査が終わっても依頼人から私への連絡は途切れることはない。
その後の弁護士相談中のこと、変わって行った自分自身の心境。言葉では簡単に表現できない日常のあれこれ、随時連絡をくれる。
特に男性の場合、妻と別居すると大きく家庭環境が変わっていく。
依頼人A氏の子供達はまだ学生なので、弁当をはじめ夕食を毎日作らなければならない。ここは一時しのぎでも誰かに甘えて家事をお願いすることは出来るはずなのだが、A氏いわく以前と変わらぬ日常を子供に与えたいと奮闘する父だった。
A氏はこれまで料理を作ったことは皆無、かろうじて出来るのは焼くこと、炒めることぐらいで、唯一持つ、そのテクニックで何とか2時間半をかけて、初めて作った娘のお弁当は肉炒めと野菜炒めと何度も失敗した卵焼きであった。
早速、その弁当の写真を見せていただいた時、私だけが知る、これまでの依頼人の苦悩と、ようやくここまでこれた日々も相まって不覚にも涙がこぼれそうになる。
だが何かが足りぬと気持ちが騒いだ。
A氏に生意気にもアドバイスとして、わかりやすく言うならば信号機をイメージしてほしいと、彩りとしてプチトマトを隙間に入れるだけで女子向けの弁当になるとアンサーしておいた。
そんなA氏は今100均にはまっているという。偶然立ち寄ったキッチンコーナーのあふれるお便利グッズに驚き、モノで時短しようともくらんだのだろうか、レンジでチンして数十秒で出来上がる、だし巻き卵器、みじんぎり器、皮剥き器、もう数えきれないほどの商品を購入し、ダイソー恐るべし、知ってましたか!!と熱く語る。
もちろん知っていたよ。
A氏。
主婦はいつもこの日常を少しでも変えたくて、そこに出向き何かを購入する。私はニンニクの皮むき器をおすすめしておいたが、しばらくしてA氏から、だし巻き卵はチンよりも、自分でうまく作れるようになったらしい。
ビーフシチューならば簡単だろうとおすすめしたのだが、なんとA氏はパッケージ通りに作れば出来上がるはずのシチューなぜかアレンジしまくったようだ。
全ての工程を最大の火力と、とりあえず最高の素材をふんだんにぶち込み、気づけば素材が全てルーになってしまい不安を覚え、キャラメルやら赤ワインを買いにコンビニに走ったという。
どうやら赤ワインも半分以上注入し、キャラメルに至っては分量を聞いていないが、いかんせんクックパットに惑わされすぎたのだろうか職人技が随所に意味なく入る。
無論、出来上がった大鍋のシチューは最高の素材を使用したにも関わらず、一口食べると「何これ、なんなのよ~~~」の味で夕飯にはならず、私と爆笑しながら料理、家事の失敗談義は尽きない。
それでもA氏は、疲れた身体を奮い立たせ朝靄の時刻、その扉を開け、包丁を握り、食器を準備する。
無心になる時間の中で、かつての妻の砦の全ては妻の選んだ品々で覆われて、新しい生活が始まったので、払拭するように少しづつ買い替えているとも聞いた。
日常は忙しくその連鎖はうまくいけば流れるように気持ちよく動き出す。
だが、誰も称賛してくれない、この地味な世界はふと逃げ出してしまいたくなって、大切に出来ない人がたくさんいるらしいが、またそれを一から作り出す人もいる。
子供達がいつか大人になったら、父の作ったお弁当や夕食が、父がどんな思いで作ってくれていたかきっと気づいてくれるはずだろう。
A氏とは長い付き合いになりそうだ。
どうしても余らせてしまう食材の管理や冷凍コーナーの整理の仕方など、つい良いだろうと購入してしまう100均グッズが実は使えない問題、まるで主婦友のような相談が入る。
私は離婚して20年以上たってしまい主婦感覚が薄れ、即座に即答出来ないこともあり、料理はもちろん家事ほど、その人の生き様、センスが要求されるもので、答えは一つではなく、広がりは果てしない。
でもこんな悩みなら、爆笑することしきり。お弁当も徐々にレベルアップし驚きを隠せない。リベンジのビーフシーチューを作ったら写真送りますとのこと。
今年一番、待ち遠しい写真かもしれない。