浮気 プラトニック裁判
2015年5月12日 カテゴリー:調査記
浮気調査の慰謝料については本来、不貞行為すなわち肉体関係につながる関係性を確認したことで請求できるが、プラトニックの関係で慰謝料請求が認められた珍しいケースである。
「夫と親密な関係を続け精神的苦痛を受けたと、夫の同僚女性に220万の損害賠償請求を求めた訴訟で大阪地裁は44万の支払いを命じた。判決は同僚女性が夫に何度も肉体関係を迫られながら、巧みにかわし「貞操」を守ったと認定、それでも同僚女性がアプローチをはっきりと拒絶せず逢瀬を重ね二人の時間を過ごしたことから地裁は同僚女性の態度と夫の(原告女性への)冷たい態度には因果関係があると判断した」。(産経ウエストニュースより一部抜粋)
裁判に至るまでこれまでの妻の苦しい経緯があった。
見えない感情の奥深くまで入り込んだような、この結果は調査業に身を置く者として非常に考えさせられる内容だった。
なぜなら、拒みながらも夫のそばからけして離れず、自分が妻の立場になっていれば疑う余地ありと思えるほどの深い関係を両者は続けていたからだ。
妻は精神的に不安定な面があったという。
夫がマラソン大会に出場しようとしたシューズの靴紐をハサミで切ったりするなどの激しい一面を持っていて、その妻についての相談や悩みを女性に打ち明けるようになる。
どんな関係も始まりは単なる友人、知人であって、女性は聞かされた相談内容も同僚として心配し、人として真摯に耳を傾けるだけだったという。
だが逢瀬は続き、あろうことか出張先や花火大会と密会を重ねるようになるのだった。その過ごし方の詳細は細部にわたって記されていて会話の内容まで含まれていることから調査会社に依頼したのだろうか。
恐らくこのような妻ならば激しい攻めはあったはずだが、それでも何度もこの女性と密会を重ね女性も夫のアプローチを避けながらも、わざわざホテルも別の部屋を取り、それでも一緒に過ごしていることの説明がつかない。
まるで不貞行為とはなんぞやと問われているようだ。
目に見えない感情のまさぐりと、すれ違う感情をもてあそび、嫌いといいながら大好きですと答えているかのように。
一度や二度の浮気くらいで・・・そうそう目くじらを立てるなと思われるのかもしれないが、浮気は受けた人にしかわからない苦しみで、自分の存在価値と自信を失わせ、今後の生活の多大なる不安を思い、心の中に流れる涙が止まらなくなってしまうのです。
その涙はけして人前では流れません。
夫には修羅のように立ち向かってしまうため、ますます夫を女の元へ向かわせてしまう。
美しい花が咲いていればそこに引き寄せられて、触れ、かぐわしい香りを嗅いでみたい衝動に駆られてしまうもの。無論、眺めるだけですむはずもなく、二度と帰れなくなっていくことが浮気の先にある姿である。
長年、浮気に翻弄される人達と共にいて、職業である調査会社の相談員として、この裁判の行方は去年から気になっていた。
44万という金額が心の痛みに対して妥当であるかは別にして、ネット上でプラトニック裁判として賑わしているが、その後、この夫婦の行く末はどうなっていくのだろうと。
夫婦のことは夫婦にしかわからない。
それでもやはり一番の問題は夫であって、対して女性も貞操という概念を盾に妻を揺さぶり続け、妻をより狂気にさせていったことを気づいていたのだろうか。
プラトニックとは純粋な無垢な精神性をあらわしていると思っていたが、私はこの裁判を知ってから、美しい言葉に隠された男女の見えない狂気と激しい情愛を感じてしまうのだった。