胡桃の部屋
2011年9月02日 カテゴリー:雑記
没後30年。
今もなお、ドラマの脚本や特集が組まれるほど輝き続ける作家。
向田邦子。
NHKドラマ「胡桃の部屋」が放映されていました。
私は余りテレビを見ない人で、テレビ欄も全く見ないので放映に気がつかなかったのですが、気になるドラマがあると依頼人の奥様が教えてくれました。
「阿修羅の如く」「あ・うん」など一貫して、どこにでもあるような普通の家族の姿を描き、普通に見えて、人間には隠された狂気や修羅があることを教えてくれます。
このドラマは、良き父がリストラなり、失踪を発端にうまくいっていたはずの普通の家庭が徐々にくずれていく様の日常を見せてくれます。
妻演じる竹下景子が帰らぬ夫に絶望しながら、落ち着きを取り戻し、茶の間で、くるみを子供達に割りながら、くるみは割っても実のない空っぽの部屋がある。
あるはずだと思い込んでいても、そこには何もない。
お父さんはその何もない空っぽの世界へ逃げ込んだことを静かに語ります。
父の行いを赦せなかった娘達も夫の不貞や自身も家庭ある人との恋愛に苦しみ、息子は就職がうまくいかず、それぞれが普通であることの難しさ、人生は簡単ではないのだと、次第に父への思いに変化を見せていきます。
ある程度の年齢に差し掛からないと理解出来ないこと。
いけないとわかっていても、その世界へ行ってしまうこと。
そして、それを正してくれるのは、やはり家族しかいないのだと。
随筆の作品でもその多くは結末は苦さを持って、けしてハッピーエンドで終わりません。
それが真実味を帯びて、何かピリピリした感覚を放っていたのですが
今回は少々つまらないラストになっていたことが残念でした。
旅を食を猫を愛し、こだわりのライフスタイルを貫き通した彼女。
生涯独身であったのに、家庭や夫婦の機微の敏感さ。
依頼人には、先ずはエッセイからどうですか?と。
おすすめするつもりです。