海に向かって
2011年6月15日 カテゴリー:雑記
朝。
自宅を出て数分のところで、老女に声をかけられました。
国道の抜け道で車の往来が激しい時間です。
「あの・・・・海は近いのでしょうか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
河川敷きなら歩いて30分ほどなのですが・・・。
ああ・・そうだったと気がつきました。
我が家の近くには老人施設があるのです。
たまに住宅街を彷徨う方がいます。
海に向かって歩きましょうと。
静かに手を取って施設まで向かう途中。
施設の係の人が走ってやってきます。
ふと、思い出します。
依頼人は地方の方で、お電話だけのやり取りでお受けさせていただいた生き別れた母の所在調査。
調査の結果、母は某施設に入所されていたのでした。
判明後、母の容態が一刻を争う事態だったため、すぐに会いに行かれ、家族であるので面会もでき、再会を果たしました。
この方とは遠方のため、一度もお会いすることは出来ませんでしたが丁寧なお礼状をいただき、今も大切に持っています。
年間の行方不明者は10万人以上とされていますが、高齢や障害を持った方も多くいて、自分の意志で家出をした可能性は低く、このようなケース場合、事故に巻き込まれたりすることもあります。
歩くことや話すことは可能なのに記憶の回路が止まってしまうこと。
実際に見るとこれは実に危険なのだと知ります。
握り締めるその小さな手は、思いのほかとても強く感じられ、私の母とそう変わらない年齢でしょう。
何も持たないでまっすぐと歩きだした老女の記憶の中にある海というキーワード。
一体どんな過去の思い出があったのでしょうか・・。